任期終了が約1ヵ月後に迫っている盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の「意地悪」が度を過ぎているという指摘が多い。大統領職引継ぎ委員会の活動と李明博(イ・ミョンバク)当選者の政策と公約をことあるごとに批判し、22日の閣議では、引継ぎ委がまとめた政府組織法改正案について「私の所信と哲学に合わない」と述べ、拒否権行使の可能性を示唆した。
●新政府に盧武鉉の哲学と所信を強要
大統領が新政府の組織再編案に対して拒否権の行使を示唆するのは前例のないことだ。李当選者の哲学と所信に従って運用される新政府に、自分の哲学と所信を強要したことに他ならないからだ。「私の考えとは違うから、組織再編をするならば、新政府発足後にやれ」という話でもある。
盧大統領が一歩退かなければ、新政府は政府組織も変えられないまま、長官も任命できない状態で発足する可能性がある。現行どおり長官を任命すれば、数ヵ月後に選びなおさなければならないからだ。しかも、新政府発足直後の4月に総選挙が予定されているため、今度任命できなかったら、大幅に遅れる公算が高い。
拒否権行使のカードを切り出した時期も不適切だったという批判が多い。政府組織改正案は、先に国会で処理しなければならない事案だ。盧大統領の拒否権行使示唆の発言は、引継ぎ委がまとめた政府組織法改正案が国会に提出された翌日に出た。言うまでもなく、ハンナラ党と大統合民主新党の議論が始まってもいない状態だ。このため、政界の交渉に影響を与えようとする政治行為としか捉えようがない。
千皓宣(チョン・ホソン)大統領広報首席秘書官兼報道官は、「政府組織再編は手続きの上から現政権と現大統領も責任を負うこと」とし、「大統領府が考える政府組織の再編の水準と関連しては、これから『大統領府ブリーフィング』を通じて、または各省庁の長官が直接明かしていく」と述べた。
●「最大限協力する」と言った約束はどこへ
盧大統領が拒否権行使を示唆したことで、引継ぎ委とハンナラ党を中心に流れていた世論を逆戻りさせた。政界では引継ぎ委とハンナラ党に対する対立ムードが形成され、「現政権対次期政権」の対立構造が浮き彫りになった。任期末まで盧大統領が影響力を発揮できる環境が整えられたわけだ。支離滅裂だった与党系グループの状況を見て、「私が乗り出さなければならない」という切羽詰った気持ちが作用したかも知れない。
しかし、このような姿は、盧大統領が強調する「政治の道義」に合わないという批判も出ている。盧大統領は昨年12月19日、大統領選挙結果について、「受け入れる」とし、「民主主義とは敗北に承服することだ」と述べた。
昨年12月28日、李時期大統領を会見した場では、「新政府が円滑な滑り出しができるよう、最大限助ける」と約束し、12月31日に発表した「2008年の新年の辞」では、「次の政府がさらに良い環境でスタートできるように、残りの期間、最善を尽くす」とも述べた。
しかし、実際は暇さえあれば新政府の政策を非難した。今月3日、次官級以上の高官たちとの新年のあいさつ会で、「このままゆけば、津波に見舞われるのではないか…大きな土木工事を1件だけすれば、わが経済が回復するのか」と言い、50分間、教育政策や韓半島大運河など、李当選者の政策と公約を非難した。
4日、経済界との新年のあいさつ会では、引継ぎ委の活動について厳しく批判し、「ただでさえ寂しい後ろ姿なのに、ちょっとやりすぎではないかという気がするのだが、最近は塩まで投げられてくるようだ。これからも塩がまかれ続ければ私が傷を負うだろうが、最後までやってみよう」と述べた。
「平壌対話録」を漏らした金万福(キム・マンボク)国家情報院長が、15日、辞意を表し、検察は金院長が漏らした対話録が「国家機密」に当たると見て捜査に着手したが、盧大統領は23日までも辞表の受理を見送っている。むしろ大統領府報道官を通じて連日、「国家機密に当たらないと判断する専門家が少なくない」とし、局面転換を図っている。
延世(ヨンセ)大の黄相旻ファン・サンミン心理学科教授は、「全てのことを自分の立場でのみ判断し、人に自分の考えに従うのを強要するのは、過度に自己中心的な考え方だ。任期最終日まで意地悪を続けるだろう」と予想した。
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