李明博(イ・ミョンバク)政府が今日スタートした。大韓民国建国60周年になる年に始まる新政府の任期5年の意味は深い。産業化と民主化の達成は継承しつつも負の遺産は清算して、大韓民国を名実共に先進国の隊列に入ることができるのか。私たちは今日、形式的な「徳談」ではなく、政府と国民が5年後の大韓民国の姿を描き、先進化の条件をともに築いていくことを提案する。先進化なくして韓国の未来もないためだ。
国家の当面の課題を直視して国民の理解と協力を求めるのが、一番にすべきことだ。大統領と国民がすべき事とすべきでない事、先にすべき事と後ですべき事に対して、哲学と信念を共有しなければならない。推進するのはその次だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の失敗も、結局はここから始まった。国民は暮らしの問題を心配するのに、政府は空虚な理念論争と過去の事を暴くことに没頭したため、国政の2つの軸である政府と国民が絡み合わなかったのだ。
韓米自由貿易協定(FTA)を例に挙げよう。世界最大の市場である米国とのFTAは、韓国にとって選択ではなく生存の問題だ。盧武鉉前大統領が、協定に合意したのは功績だと言えるが、韓米両国の国会批准を果たせないまま退いた。もし批准ができないまま5年を送ることになったなら、その結果はどうなるだろう。グローバル化と経済統合の波の中で、FTAの拡大なしに先進化のインフラは決して構築できない。EU(欧州連合)はもとより、中国、日本、インド、中南米とも、早期にFTAを推進する必要がある。にもかかわらず、韓米FTAの批准に縛られていたなら、5年後の韓国は決して先進国にはなれない。大統領みずから国民を説得することに乗り出さなければならない。
6者協議の動力を活かし、北朝鮮核問題を解決することも緊急の課題だ。透明な検証手続きを経て、核を原状回復できないように解体しなければならない。核問題を解決できず5年が経てば韓国は核の人質になり、周辺4大国の間に挟まれて滑路を見出すことが難しくなる。
21世紀の話題は、エネルギーと異常気象だ。米国、ロシア、欧州、日本のような経済大国はもとより、中国、インド、ブラジルなどの新興工業国が、一寸の譲歩もなく外交戦争を繰り広げている。埋蔵量が限られた石油は、地球温暖化の主犯になっている。エネルギー確保に劣らず、新再生エネルギーの開発に向けた投資と技術開発に力を入れなければならない。
目を国内に向ければ、小さな政府と規制廃止がやはり急がれる。日本の渡辺行政改革相は、東亜(トンア)日報とのインタビューで、「官主導型の成長は過去日本のおはこだったが、グローバル化時代にはもはや通用しない」と話した。そして、「民間の創意性を高め、官の干渉を減らす公務員改革は、天の声、国民の声だ」としたうえで、「公務員改革に成功できなければ、日本は沈没する」と強調した。日本でも状況はこうなのに、新政府の「小さな政府」改革案は、与野党交渉の過程でぼろぼろになった。
統計庁によると、今年の総人口4860万から2013年には4910万に増える。人口増加率は鈍化しているが、内容を見ると深刻だ。国際通貨基金(IMF)は、韓国が急速な高齢化の進展で、財政危機に陥る可能性を警告している。2005年には、生産可能人口7.7人が高齢者1人を扶養するが、2050年には生産可能人口1.5人が高齢者1人を養う社会になる。これに対する備えをどのように、何の財源でするのか。
国民年金の枯渇時期も、2040年に繰り上げられる不吉な予告が出ている。国民年金は改革する振りはしたものの、税金で補填される赤字公務員年金は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府で手もつけられなかった。構造調整のない「安定した職」であるうえ、年金まで国民年金よりも数倍いいため、若い人材が先を争って公務員試験にしがみつく「公試族」になっている。李大統領は、公務員に人気のない大統領になる覚悟をして、「小さな政府」と「小さな年金」に進まなければならない。
外見だけを小さくしたからと言って、小さな政府とは言えない。民間の活力を高めるために、政府が干渉と規制を小さくすることが、本当の小さな政府だ。職業官僚たちの魂を目覚めさせ、公職社会の変化を導き出さなければならない。国民は、上手い振り、一生懸命する振りをするショーにはだまされない。大統領引継ぎ委員会は「ノー・ホリデー」を誇ったが、だからと言って実質的に果たしたことは何か。
全世界的な金融危機と石油価格の高騰の中で、経済成長の動力を回復することも緊要だ。この5年間、経済成長率は世界平均を下回り、潜在成長率は4%台に落ちた。いい雇用を多く作るためには、成長力の回復が必須だ。対外環境の悪化で成長率の目標値を6%に下げたが、これすら達成することが難しいのが現実だ。企業の投資と採用を増やすための「ビジネス・フレンドリー」政策は、民間の意志と創意が原動力にならなければならない。
国家の競争力と成長動力は、長期的に結局は人才の質と量で分かれる。先進国は、国家の命運をかけて、小学校から大学まで全面的な教育改革を推進している。教育は、入試制度の改編程度にアプローチする事案ではない。一線の教師と父兄が、人才を育てる教育、国家を強くする教育の哲学を共有しなければならない。
先進国になるには、文化の価値を尊重する社会ムードづくりのために、政府と国民がともに努力しなければならない。文化郷愁の機会を拡大し、精神文化を奨励すれば、社会的和合と葛藤の治癒にも大いに役に立つだろう。
李明博政権が、大統領選勝利の陶酔感から覚めなければ、4月の総選挙で悲惨な対価を支払う恐れもある。ただでさえ、長官候補たちの不動産投機疑惑まで重なり、李大統領に対する支持率も急激に下がった。不信は些細なところから起こるものだ。厳正な長官人事聴聞会を通じて、国民の同意を受けられない長官候補は濾過する必要がある。国民の自発的な参加を引き出すには、李明博大統領と長官、大統領府秘書たちからまず汗を流し、犠牲になる姿勢を見せなければならないだろう。
国民も、集団利己主義、不正腐敗、共同体精神の弱体化のような誤った慣行から抜け出さなければならない。法を尊重する意識と文化が必要だ。法秩序だけを守っても、国内総生産(GDP)が1%上がるという報告もある。
国民が家計を考えるように国家のことを考える、真の参加者にならなければならない。いくら有能な政府だとしても、国民の傍観の中では何も成し遂げることはできない。政府と国民が手を取り合って、先進化のドアを開くことができなければならない。それが李大統領と新政府に与えられた歴史の召命である。