李明博(イ・ミョンバク)大統領は昨日の就任演説で「政府が国民を精を尽くして仕える国、経済が元気よく動き、労使が一体となって少数派と弱者を温かく配慮する国、優秀な人材を育てて世界へ送り出し、世界の人材を呼び入れる国にする」と抱負を述べた。これが第17代大統領が描く大韓民国の姿だと言った。そのような国を作るための約束と覚悟を約8700字の就任演説に盛り込んだ。
就任演説は、任期5年の国政課題が盛り込まれている青写真であり、国民に対する約束だ。従って、約束したことは必ず実現しなければならないが、現実は簡単でない。国政運営は企業の経営やソウル市政とは大きな違いがある。数え切れない利害関係が衝突するため、意思決定が決して容易でない。
李大統領は、「政府から有能な組織に変える」とし、「小さな政府、大きな市場で効率性を高め、仕事のできる政府にする」と述べた。しかし、政府組織の再編と組閣を見ると、李大統領に対する信頼が揺らぐ。政府組織再編は与野党の交渉過程でボロボロになってしまった。組閣はずさんな人事検証システムと国民感情を配慮しない人選で、閣僚に対する検証が始まる前から辞退する長官候補者が出た。長官候補者らに対する国会聴聞会がきちんと実施されるのかも疑問だ。不手際な人選と検証が野党の批判と攻勢を自ら招いた格好だ。はたして仕事のできる政府になれるのか、国民は安心できない。
李大統領は、「助けが必要な人は、国が面倒を見なければならない」とし、「落伍者のいない国にするため、能動的・予防的福祉を展開していく」と述べた。耳さわりの良い言葉だが、どのような財源で政策を支えるのか気にならざるを得ない。
また、世界の人材を呼び入れるとしたが、条件を整えなければ入ってくるはずがない。「労使が一つ」になるというのも口先では簡単だが、至難の業である。大統領が直接、労組の説得に乗り出すとしても、労働界が強硬闘争の惰性を簡単に捨てるはずがない。
このような難題を解決していくには、戦略は緻密で、仕事ぶりはプロらしくなければならならない。就任演説で誓った約束が守れなかったら、決して成功した大統領になれない。大統領は国民の参加を促した。国民も喜んでその荷を分け負わねばならない。大統領がいくら有能で意欲に満ちていても、独りでは先進一流国家にすることはできない。