台湾の今後4年間を率いる指導者は誰だろうか。22日実施の台湾の総統選挙を控え、野党・中国国民党(国民党)候補の馬英九氏(58)が、与党・民主進歩党(民進党)候補の謝長廷氏(62)を支持率で大きくリードしている。しかし、選挙間際のこの時期にチベットでの混乱が発生し、支持する候補がいないという有権者が40%台まで増えるなど、このままいけば選挙の構図が変わるのではという見方も出ている。
●「達磨」の謝長廷vs「太子党」の馬英九
両候補は台湾国立大を卒業し、海外で法学博士号を取得したエリートという点を除いては、大きく異なる。与党の謝候補は、台湾の独立を望む、台湾で生まれ育った生粋の本省人だ。反面、中国との「一国二制度」を支持する馬候補は香港生まれで、1949年以後に台湾へ移住した外省人だ。
貧しい家庭で育ち、弁護士試験に首席合格した謝候補は、1996年、彭明敏・民進党総統候補のランニングメートに乗り出し落選したが、1998年、高雄市長選挙で達磨のように再起して当選を果たした。同候補は、2005年、行政院長(首相)を歴任した後、翌年の台北市長選挙で再び苦杯を喫し政界を離れたが、昨年5月、民進党総統候補に選ばれるなど底力を発揮した。昨年末には波乱万丈の生涯を綴った自叙伝「逆中求勝(逆境の中で勝利を追求する)」を出版した。
これとは対照的に、馬候補は高官大爵の息子に生まれた「太子党(幹部の子弟)」出身で、1981年、蒋経国当時総統の下で総統府第1局副局長として社会人としての生活をスタートした。同氏は、1993年、43歳の若さで法務部長に抜擢され、1998年には台北市長選挙で陳水扁・現総統に勝ち、台湾政局に旋風を巻き起こした。その後、台北市長を務め、2005年7月、国民党主席に選出された。
●有権者の関心はもっぱら経済回復
2290万の台湾国民の関心は経済回復に集中している。千総統が在任したこの8年間、国内総生産(GDP)がわずか19%増に止まったからだ。このような台湾の経済成長率は、韓国、香港、シンガポールの「アジアの4頭の龍」の中で最下位だった。台湾の1人当たりのGDPは、2000年には1万4426ドルと韓国(1万891ドル)より32%も多かったが、昨年は1万6768ドル(暫定集計)で韓国(2万100ドル、暫定推計)より19.9%も少なかった。
このため、両候補の公約も経済問題に集中している。馬候補は制限されている中国との三通(郵便、通商、通航)問題を完全に解決し、全面的な経済交流によって千総統時代の年平均4.1%に止まった成長率を6%台に押し上げると公約した。両岸(中国と台湾)の間に直航路を開設し、両岸企業の相互進出を図り、「両岸共同市場」を形成することで経済を画期的に活性化するという。
一方、謝候補は低所得者層の税率を引き下げ、大規模な賃貸住宅供給を実施し、相続税と贈与税を10%以下に引き下げるという公約を掲げ、主に庶民層と中産層をターゲットに支持を訴えている。謝候補は、馬候補の「両岸共同市場」は結局、台湾市場を中国に献上する「一中市場」の格好になると、厳しく批判している。
●チベット事態、支持率に影響か
台湾の国民は世論調査で「誰が国民の幸福指数をさらに高めることができるか」という質問に対し、馬候補(30.2%)と謝候補(29.8%)にほぼ同じ点数を与えている。
台湾の経済や主権、両岸問題を解決する能力に関する支持率では馬候補が8%リードしている。昨年8月から選挙が差し迫った最近まで、全体的な支持率は馬候補が40〜60%で、謝候補(18〜27%)を大きくリードしている。
結局、両候補への支持率は候補に対する評価というよりは、千総統の経済失政に対する不満の表れであると政治評論家らは見ている。しかし、「一つの中国」を認める馬候補は、最近浮き彫りになったチベット問題で、支持する候補がいないという有権者が拡大したため、いら立ちを募らせている。
馬候補が18日、「中国政府がチベットを武力で鎮圧すれば、五輪をボイコットすることもあり得る」と強力に警告したのもこのためだ。
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