「労使の共生と和合、未来志向の労使関係の確立のため、今年の賃金交渉や団体交渉を何ら条件をつけずに会社側に委任することにしました」
LS産電の長項(チャンハン)工場労組が今年度の賃金問題の団体交渉のため、先月27日、京畿道東安区虎渓洞(キョンギド・トンアング・ホゲドン)のLSタワーで初顔合わせをした席で、金ビョンソク労組委員長がこう切り出すと、会社側の代表らは驚いた。
長項工場労組が会社側に賃金団体協約を委任したのは、労組設立53年以来初めてのことだからだ。具滋均(ク・ジャギュン)LS産業電会長は「目頭が熱くなった」と話した。
金労組委員長は2日、東亜(トンア)日報との電話で、「原資材価格の急騰で会社の採算性が急速に悪化し、会社の事情が好転してこそ組合員たちの利益にもなるという共感が形勢された」とし、「2000年代の労組が1980年代の労組と同じことをするわけにはいかない」と話した。
●賃金団体交渉で「無紛糾妥結」相次ぐ
全国民主労働組合総連盟(民主労組)が6月末〜7月初めにゼネストを予告するなど、労働界の上層部には尋常でない空気が感じられた。しかし一線の産業の現場では、賃金を凍結したり賃金問題の団体交渉を無紛糾で妥結する会社が増えている。
韓国経営者総協会によると、GSカルテックス、錦湖(クムホ)石油化学、大宇(テウ)造船海洋、東国(トングク)製鋼グループ、ポステク、浦製(ポチョル)産機、高麗(コリョ)製鋼、アモレパシフィック、ヒューケムス、平和精工、チンフン企業などは賃金に関するすべての事項を会社側に委任した。またLG電子、ハイニックス半導体、大韓航空、コーロンなどは苦痛分担という理由で今年度の賃金を凍結した。
ハイニックス半導体は21年、LG電子は19年、アモレパシフィックは17年、E1は13年、NOROOペイントは10年連続の無紛糾妥結を続けた。南海(ナムヘ)化学から独立したヒューケムスは、1974年に会社設立以来初めて無紛糾妥結を達成した。
公共部門も例外ではない。先月のソウル市内バスに続いて、大邱(テグ)市内バスの労使が今年度の賃金団体交渉を無紛糾で妥結することに合意した。
●労組が変わっている
過激な労組がある一部の企業の先行きは不透明だが、労使問題をめぐる社会全般の雰囲気は以前とは変わりつつあるのでは、との観測も出はじめている。
労働部によると、2002年に322件だった国内の労使紛糾は04年には462件に増えたが、05年に287件、06年253件、そして昨年は212件と減少する傾向を見せている。
勤労損失日数(スト日数×スト参加勤労者数)も、02年に158万404日だったのが昨年は63万685日に減った。
とくに原油高と原料・資材価格の急騰、世界経済の落ち込みなど、経営環境が悪化している中で、企業の生き残りを先に考える労組が次々と現れ、経営界の雰囲気を鼓舞している。
04年に64日間のストが続いたコーロン亀尾(クミ)工場は、今年度の賃金を自主的に凍結した。労組のソン・ピルソプ教育宣伝部長は、本紙との電話で「会社が厳しくなったので賃上げを要求しづらくなった。我慢してきたついでに数年もっと辛抱しようと組合員たちを説得した。賃金凍結案に対する投票に98.8%が参加し97.5%が賛成票を投じた」と説明した。
李雄烈(イ・ウンリョル)コーロングループ会長は最近、「一時期、社会的に物議をかもして一番胸を痛めた亀尾工場が(私を)一番感動させた」と話した。
E1の李スンヒョン労組委員長は、「職場に通う理由は、賃金と福祉と雇用の安定だ。戦って勝ち取る方式は昔のやり方だ。もはやそういう時代は終わった」と話した。
西江(ソガン)大学の南盛日(ナム・ソンイル)経済大学院長は、「個別の事業所の労使間の協力ムードは、グローバル競争の中で世界的な現象として広がっている。韓国だけが、いまだに上級団体が政治的な理由で一線の労組の足を引っ張っているのが実情だ」と指摘した。