李明博(イ・ミョンバク)政権に対する国民の支持離れが深刻な水準だ。ソウル都心では連日、ろうそくを手にした人で溢れている。「牛肉再交渉」を主張していた声が、反政府スローガンに変わりつつある。リアルメーターの世論調査によると、李大統領に対する支持率は16.9%にまで落ちた。ろうそく集会を続けなければならないという意見も64%にのぼった。政権与党であるハンナラ党は4日、再補欠地方選挙で惨敗した。牛肉問題を越え、李政権への国民の総体的な怒りを感じる。
にもかかわらず、大統領府の現実認識は安易きわまりない。内閣改造レベルの人事刷新をしても不十分な状況で、「大幅な人事刷新の方針は、誤って伝えられたもの」という安易な発言をしている。したくないことを前にして、ぐずぐずしているような姿だ。この数日間の暴雨のために、ろうそく集会の参加者が減ったのを見て、デモが静まったと勘違いしたのではないか。そのような認識水準で、どのようにしてこの難局を突破できるのか、実に心配だ。
李大統領は、国政の危機を越えて、政権の危機にまで突き進む今の時局を重く受け止めなければならない。国民は、大統領のリーダーシップそのものに不信感を抱いている。このような状況を克服せずには、国政を担うことはできない。大統領から変わらなければならない。画期的な国政刷新策と国民感情の収拾策を通じて、変化したリーダーシップを国民に示さなければならない。
今の危機は牛肉問題によって触発されたが、元はと言えば、人事問題に帰結する。国民の目には、内閣と大統領府の高位職は、裕福な人、運がいい人、不道徳な人、無能力な人で埋め尽くされたように映っている。これらの面々を見よ。道徳的に尊敬できるだろうか。国民はそうは見ない。このような認識が、結局、政権に対する不信につながっている。公職者は、保身よりも国益をまず考えなければならない。にもかかわらず、自分の身を投じて大統領に直言する参謀が一人でもいるだろうか。
統治行為は、統治者が国民を説得して、自分が望む方向に国政を導いていくことだ。その過程で、必然的に葛藤と混乱が発生することもある。これを事前に防止し、葛藤が生じた時はこれを調整し、解消することが、内閣と大統領府にいる人々の役割だ。牛肉問題から始まった今回の事態は、その役割が十分に果たせなかったという動かぬ証拠である。大統領は、「訓練をした」と言ったが、責任を果たしてはいない。
大統領を変えることができないなら、大統領の周囲の人的ネットワークを矯正しなければならない。内閣は、首相から交代しなければならず、具体的な問題がある長官もみな変えなければならない。大統領府は、首席以上はみな交代すべきだ。かなりのコストを払わなければならないが、今はそれだけのコストは支払う段階である。
問題は、どのような人物でその地位を埋めるかだ。今の状況が、李明博政府、李明博路線に対する国民の総体的な拒否なら、大妥結の精神でこれを補完できる人物を探さなければならない。保守と進歩を問わず、能力があり道徳的にきれいで、国民の信頼を得られる人物を起用しなければならない。各分野の最高の専門家たちを主要ポストに座らせ、国民に国政運営に対する信頼を与える必要もある。「自分側の人物」は、徹底的に排除しなければならない。総選挙が終わってあまり経っていないにもかかわらず、票で国民の審判を受けた李方鎬(イ・バンホ)、朴亨逷(パク・ヒョンジュン)氏が、それぞれ農林水産食品部長官と大統領府政務首席に起用されるという話が出ているのは、李政権がまだ事態の深刻さがわかっていない証左である。そのような人を推薦した人物から追い出さなければならない。周辺の人々の無責任、無能、無気力がまだわからないのだろうか。再び人事で失敗したら、李政権には救済の道はないだろう。
ハンナラ党も、安易と旧態依然から脱しなければならない。国民の目には、ハンナラ党はまだ、セレブ政党の体質から抜け出せていない。無策、怠惰、情熱の不足、大きな眼目がないという認識だ。姜在渉(カン・ジェソプ)代表は、今回の再・補欠選挙について、「謙虚に反省し、心機一転する」と言ったが、そのような常套的な言葉では、国民を感動させることはできない。李明博大統領とハンナラ党は、今から完全に生まれ変わらなければならない。