彼には確かに特別な何かがあった。敗色が濃厚だったが、ある瞬間、奇跡のように生き返った。
タイガー・ウッズ(33、米国)は1打差の2位だった18番ホール(パー5、527ヤード)でバーディーが必要だったが、ドライバーショットが左側に偏り、フェアウェーのバンカーに落ちた。弱り目に祟り目で、9番アイアンで打ったセカンドショットが右側のラフに落ち、立腹したあまり、他のクラブを放り投げた。101ヤードを残して60度のウェッジで打った3番目のショットは、ピンの右側3.7メートル地点に落ちた。厳しい下り坂のフックライン。繰り返される危機の中で、最後の「切り札」が必要な状況だった。
パターを離れた球は、ホールの右側を曲がっては吸い込まれるかのようにカップに落ち、グリーン周辺に雲集した約2万人のギャラリーは興奮を隠さなかった。
4月15日、手術を受けた膝の痛みに苦しめられながら、足を引きずっていたウッズだったが、まるで完全に治ったようにアッパーカットセレモニーを連発した。
16日、米カリフォルニア州サンディエゴ近くのトーレパインズGC(パー71)で行われた「第108回USオープンゴルフ大会」第4ラウンド。
1番ホールはダブルボギー、2番ホールもボギーと、ぱっとしないスタートを切ったウッズは、2打を失ったものの、決定的なバーディーに支えられ、通算1アンダー、283打でロコ・メディエイト(46、米国)と首位タイに並んだ。このため、勝負は17日未明、18ホール延長戦に持ち越されることになった。
これでウッズはメジャー大会最終ラウンドを首位でスタートした13大会で、いずれも優勝した「逆転不許」の神話を守るチャンスをつかんだ訳だ。
先に試合をフィニッシュし、クラブハウスでウッズの試合を見守っていたメディエイトは、「ウッズが入れると思っていた。怪物と戦わなければならない」と話した。
メジャー13勝を含め、米プロゴルフ(PGA)ツアー通算64勝に輝く世界1位のウッズと、まだメジャー優勝なしに通算5勝に過ぎない世界ランキング158位のメディエイトの対決は、経歴だけを見れば結果は明らかだ。しかし、手術後の初大会で5日間90ホールを回らなければならないウッズは肉体的な限界を乗り切らねばならない。
最後まで優勝を争ったリー・ウェストウッド(イングランド)は、18番ホールで6メートルのバーディーパットに失敗し、1打差の3位に止まった。
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