金貳煥(キム・イファン)韓国広告主協会の副会長が20日早朝、匿名の市民たちに乱暴された。前日、広告主協会がインターネットのポータル会社であるDAUMとNAVERに「東亜(トンア)、朝鮮(チョソン)、中央(チュンアン)日報に公告を出した広告主を脅すサイトを管理してほしい」という内容の公文を送ったのが原因だった。金副会長は、「どのように家の電話番号まで知ったのかわからないが、明け方からひどい暴言と罵倒を浴びせられた」とした上で、「自由になるべき広告主のマーケティング活動をこのように妨害するのは、市場経済に対するテロに他ならない」と憤慨した。問題は、このような暴力が「消費者運動」を名目に正当化されているということだ。
◆ソウル大消費者学科の余禎星(ヨ・ジョンソン)教授は、「消費者運動は、特定商品に対して不満のある該当消費者が不買運動などを通じ、意思表現を行うものだが、自分と見解の異なる記事を載せたからと言って、その媒体に公告をした広告主を、匿名で脅迫するのは消費者運動を盾にした明白な政治運動だ」と指摘した。淑明(シュクミョン)女子大学消費者経済学科の文貞淑(ムン・ジョンスク)教授も「消費者運動であるかどうかは別とし、資本主義(を支える)の土台である『経済主体たちの自由な活動』を認めないというのは、体制への脅威」とし、「他人が食べる食べ物や着る衣服が気に入らないからと言って、それらを作った企業を脅すのも同然だ」と強調した。
◆過去の消費者運動が「消費者保護」に重きを置いたならば、現代は消費者の選択と行動に責任を負う経済主体としての「消費者主権」が強調されている。消費者政策も単なる被害補償の次元を超え、商品の購入前に関連情報や約款を十分に熟知するなど、消費者の事前努力が求められている。うそと脅迫で企業を苦境に追い込むような「ブラック・コンシューマー」時代に、消費者は弱者であるため企業に対してどんなことをしても許されるのだろうと言わんばかりの言動(広告主の脅迫)は、貿易規模で世界13位の韓国のステータスからしても恥ずかしいことだ。
◆これらの市民たちは、何よりも自由民主主義の中核価値である「言論の自由」を踏みにじっている。1970年代の東亜日報の白紙公告事態の際には、独裁権力が広告主に公告を載せないように働きかけるなど、マスコミを弾圧したが、今は悪意的な「匿名の市民」たちが権力に代わって言論弾圧をしている格好だ。軍部独裁に代わる「大衆独裁」を夢見ているのか。成熟した市民精神がこれを許すはずがない。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com