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「思い出を収集する」専門コレクターの世界

「思い出を収集する」専門コレクターの世界

Posted July. 02, 2008 08:19,   

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1993年2月、アルバム収集家のソン・シワン氏(47)は、ふとスペイン・マドリード行きの飛行機に身を乗せた。当時、ソン氏は1960年代や70年代に活動したスペインのアートロックバンド「ロス・カナリオス(Los Canarios)」に関する情報を探し求めていた。同バンドのアルバムをようやく手にして、自分が司会を務めていたラジオの音楽番組で数回紹介したソン氏は、彼らに関する情報を本格的に集めるため、スペインへと旅たったわけだ。

ソン氏はまる4日間、マドリードのいたるところを歩き回ったが、出国の日まで何も手にできなかった。心のもどかしさを感じながら地下鉄に乗り、いきなり、多くの人たちの降りる駅で降りて、みすぼらしいアルバム店に足を踏み入れた。

店の一角から古びた新聞の束を見つけたソン氏は、飛行機の搭乗時間も忘れ、新聞をあさり始めた。そしてついに、ロス・カナリオスに関する3つの新聞記事を見つけ出すことに成功した。

「『バンドに関するいくつかの新聞記事を見つけ出したなんてたいしたことないじゃないか』という人は、コレクションの真の喜びが分からない人ですね。当時、アートロックに夢中になっていた私は、アルバムであれ、新聞記事であれ、それと関連のあるものなら何でも集めたかったんですよ」

●「ほしいものを集めるのがコレクション精神」

ソン氏のような人々は専門コレクターだ。趣味で物を集める素人コレクターとは異なって、専門コレクターは、それを「生業」と思う。

彼らにとってコレクションは収集した物のみならず、収集の行為そのものも重大な意味を持っている。単に集めるのではなく、収集の行為や収集物を自分だけの物語で再度構成することこそ、真なる収集だというわけだ。コレクションのベテランたちは、テーマやジャンルを設定して、それに合わせて収集を行う。

それで多くの専門コレクターにとって収集品の数や規模はそれほど重要ではない。

ソン氏は、「最も多く聞かれる質問は『アルバムは何枚ぐらい集めたのか』だが、正直言って私もよく分からない」と話した。

「1000枚の価値が100万枚より大きいこともありえますね。だが大事なことは、『どれだけ多く集めたのか』ではなく、自分がほしいと思う『ほかならぬその物』を持っているかどうかです」

ソン氏は小学校時代から約40年間、希少なアルバムを集めてきた。1982年〜1999年、ラジオDJとして活躍し、今も、「シワン・レコード」というアルバム流通会社を経営しながらさまざまなジャンルの音楽を紹介している。また、今月末までソウル鍾路区通義洞(チョンノグ・トンイドン)のテリム美術館で、収集アルバムの展示会、「ソン・シワンのコレクション40/32/20」を開く。

●収集過程の「苦痛」も楽しみ

専門コレクターたちは、「収集の楽しみは『苦痛』から出る」と話す。

主にポーク音楽のアルバムや「フィギュア(プラスチック人形)」を収集している李スン氏(46、アルバム販売業)は、「ほしいものを手にするための苦労は苦労ではない」と話す。

李氏は1995年、アルバムを手にするためにドイツまで出向き、道端で気を失ったことすらある。当時、ヨーロッパは異常天候で、「20年ぶりの猛暑」に見舞われたが、体をかえりみずアルバムを探して歩き回ったため、熱中症にかかったのだ。

周りの人たちの助けを借りてなんとかホテルに戻ってきたが、水でシャワーを浴びた後、正気に返ると、再びアルバム探しに出かけた。あれほど探し回っていた一枚のアルバムを手にして帰り、ようやく満足できるような気がした。李氏は99枚限定で発売された世界のポークロックのアルバムタイトル200枚と、2万8000枚あまりのアルバムを持っている。

「ぎりぎりのスケージュルに、見つかる保証すらない外国でコレクションを探し集めるためには、当然のことながら無理をするしかありません。軍隊で訓練を受ける時より、さらにきついですね(笑い)。帰国する際は、体中が傷だらけですね。でも、ほしいものを見つけた時の喜びは、例えようがありません」

●過去を振り返りながら今の足跡を記録

コレクションは思い出を浮かべ、今の足跡を記録する手段にもなる。コレクションそのものも重要だが、収集の背景や流れを振り返り、過去のことを思い起こす楽しさも大きい。

美術作家のSasa[44](36)氏は、小さいときによく目にした雑誌『宝島』を集めている。小学生の時、一所懸命集めておいた数百冊の『宝島』を、20歳の時、母親が一気に捨ててしまったため再び集めているところだ。

「10歳の時、『宝島』の創刊号を買うため、ソウル瑞草区盤浦洞(ソチョグ・バンポドン)の自宅から廣津区(クァンジング)の出版社まで、一人でバスに乗って出かけた思い出があります。当時、帰りが遅く、母親に叱られましたが、『宝島』を手にし、喜びでいっぱいでした。今も『宝島』を求めて古本屋を一所懸命歩き回っており、ネットのオクッションサイトにも入りますが、なかなか手にすることができません。貴重なものですから」



nuk@donga.com