金剛山(クムガンサン)で観光客が射殺された事件が16日で発生6日目を迎えたものの、政府と現代峨山(ヒョンデ・アサン)は真相究明には一歩も進めないまま、加害者の北朝鮮の発表に一方的に振り回されている。
政府は、真相究明のカギを握っている北朝鮮当局の「通民封官(韓国当局を相手にせず、民間とのみご対話)」戦術にふさがれ、民間企業の現代峨山づてに話を聞いている格好だ。現代峨山は、ずさんな安全管理に対する責任が浮き彫りにされた上、真相究明の過程でも事実上、北朝鮮側の主張を伝えるメッセンジャーに過ぎないという指摘を受けている。
政府合同調査団は同日、被害者の朴ワンジャさん(53)に対する剖検の中間結果を発表し、「朴さんが二発の貫通銃創(銃弾が体を貫通すること)を受けて、肝臓や肺など臓器の損傷と出血過多で死亡した」と明らかにした。
しかし、合同調査団は「現場の調査を行うことができない状況で、遺体や服などだけでは限界がある」とし、△銃撃の距離、△銃撃当時の被害者の状況、△加害者の数など、真相究明に欠かせない争点は、事実上何も分からないと話している。
金夏中(キム・ハジュン)統一部長官は15日午後、尹萬俊(ユン・マンジュン)現代峨山社長を面談した後、「新たに分かったことはない」と伝え、もどかしい気持ちを隠せなかった。
政府は12日と15日、合わせて6回にわたって板門店を通して、北朝鮮側の連絡官に電話通知文を送り、真相究明のために当局間対話を提案したが、いずれも断られた。
現代峨山の尹社長は16日、記者会見を開いて、朴さんが宿舎のビーチホテルを出た時間が「当初知られていた4時31分より13分早い午前4時18分だ」と訂正した。
現代峨山側は、「ホテルの監視カメラ(CCTV)の時間が実際より12分50秒ぐらい進んで設定されていた」と釈明した。現代峨山は、真相把握の端緒になりえる決定的な証拠である時間を間違えて発表したにもかかわらず、6日間訂正しなかったため、国民の混乱をさらに広げたという批判を避けて通れないものと見られる。
尹社長はまた、「朴さんが軍事警戒区域であることを示すフェンスを越えて、800メートルの地点まで入り、軍人の阻止から500メートル逃げたところで銃撃された」と述べた。これは多くの国民が、信憑性に疑問を呈している北朝鮮の「主張」とさほど違わない。
切羽詰った政府は、国際社会に支援を訴えた。大統領府の高官は、「ほかの友好国でも今回の事件の不当性を認識しており、必要ならば、国際的な協力を引き出すことも考えている」と述べた。
しかし、北朝鮮が、韓国政府や国際社会の要請を受け入れる可能性は現在のところ極めて低く、事件の真相究明は、長期間厳しいものと予想される。