韓国と北朝鮮の異議申し立てで先週、シンガポールで開かれたアセアン地域フォーラム(ARF)の議長声明が修正される騒動が起こった。韓国は、「南北首脳会談の成果である10・04宣言に基づく南北対話の持続的な発展に強い支持を表明する」という内容に反発し、北朝鮮は「金剛山(クムガンサン)観光客射殺事件の早期解決を期待する」という内容を削除するよう要請した。議長国であるシンガポールは苦心の末、フォーラム閉幕の翌日、議論になった内容を削除し、議長声明を再度発表した。多国間会談の声明がこのように修正されたのは、大変異例のことだ。
◆ARFは、アジア太平洋地域27国が加盟する安保協議体として、主に域内和平と安全保障の増進案を話し合う。韓国は94年の発足時から、北朝鮮は00年に23番目の加盟国として加盟した。外交長官が出席するARF年例会議の成果である議長声明に盛り込まれる韓半島関連の内容は、韓国と北朝鮮にとって大きな関心事に違いない。シンガポールは、南北と同時に国交正常化した国として、どちらか一方に傾いたとは非難できないものの、敏感な事案をうまく調整できず、ARFに汚点を残したことだけは明白だ。
◆韓国外交部の対応にも欠点が多かった。金剛山観光客射殺事件の解決に向けた国際協力に没頭し、北朝鮮の「10・04宣言カード」を阻止できなかったことは、重大な失策である。シンガポールが議長声明を修正しなかったなら、韓国は長期にわたり北朝鮮の10・04宣言履行の圧力に苦しむところだった。さらに今回の騒動は、柳明桓外交通商部長官が現場で陣頭指揮するなかで起こったことであり、当惑を禁じえない。野党の外交長官辞任要求は、ゆえなく起こったことではない。
◆何より心配なことは、南北関係に及ぼす悪影響だ。今回の騒動で、南北の溝はさらに広がった。南北対話の再開はもとより、金剛山事件の解決に向けた接点探しも困難になったようで残念だ。南北が、国際舞台で対決外交を繰り広げれば、両者いずれにとっても損害である。91年の南北国連同時加盟の前は、南北は支持国の確保競争を繰り広げており、このような経験は骨身にしみている。一票でも多く得るために、南北は国力を浪費する悪循環に苦しまなければならなかった。そのような消耗的な対決外交の再演は阻止しなければならない。
方炯南(パン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com