タイムの元北京支局長オリバー・オーガスト氏は、北京の不良電球の実態について取材していた途中に電球会社の職員たちに「連行」された経験を、先月7月20日付の米紙ロサンゼルスタイムズに紹介した。彼らは「うちの会社はこの地方で最大手の雇用主で、納税者である。地方政府は、正義を具現する権限(司法権)を我々に委ねた」と言い、8時間も抑留して取材経緯などについて追及した。この不良電球会社からワイロを受け取っていた地方官僚は、電球の爆発で被害を受けた消費者が訴訟を起せないように妨害することまでしていた。
◆中国は、国民の代表を選挙で選ばない共産党一党独裁である。権力が集中しており、一番頭を抱えている問題は腐敗だ。ワイロで解決されることが多いため、法治が無視される。立法、司法、行政の相互けん制と均衡もない。言論の自由もない。今年2月にあった中国を非常状態に追い込んだ大雪による大混乱も、香港などの外国メディアによって発生から3週間後にわかった。米ニューヨークタイムズは、「日頃から、政府の無能さを咎めたり危機を警告する独立メディアが存在しないことが、被害を増幅させる原因となった」と指摘した。
◆中国の偽物が、衣料、時計、酒、タバコ、ペット犬の飼料、卵、歯磨き粉、玩具、医薬品にいたるまで蔓延している背景には、このような脆弱なシステムがある。ついには五輪開会式の式典内容の一部までも偽物だったことが判明した。メインスタジアムのステージで中国国旗を見ながら「歌唱祖国」を歌った9歳少女の独唱は、実は「口パク」だった。選抜テストで1位となった少女がいたが「歯並びが悪い」という理由で、中国共産党の最高権力集団である政治局の局員が口パクを指示した。全世界8億4000万のテレビ視聴者に向けて生中継された「足跡」模様の花火も、事前に収録されたものだった。普段は曇りの日が多い北京の夜空を勘案して、花火も曇らせ、ヘリコプターから空撮したかのようにカメラアングルを少し揺らしてコンピューターグラフィック作業を加えていた。
◆中国のネットユーザーたちでさえ「五輪までも偽物で作ってしまったら、不可能なことなどなくなる」と嘆いた。中国のポータルサイトでは「開会式の口パク」に関する記事さえも見つからない。AP通信は「中国当局がすでに検閲に乗り出した」と伝えた。改革開放30年ぶりに世界の舞台で「グローバル巨人」へと躍進した中国だが、真の大国になるための道のりはまだ遠いように思われる。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com