米ノースイースタン大学のマイケル・デュカキス(75)教授。
ギリシア移民の息子に生まれ、ハーバード大学ロースクールを卒業し、マサチューセッツ州知事を務め、88年、民主党大統領候補に選出された人物だ。候補に選出されるまでは、高い支持を受けていた彼は、共和党側のネガティブ攻勢に押され、落選の苦杯をなめた。
2日、ボストンのノースイースタン大学で、秋学期の準備に余念がないデュカキス教授に電話をかけた。大統領選シーズンを迎え、20年前の記憶を活かすしかないという彼の思いは、格別だろうと考えたためだ。
デュカキス教授は、「数日前、デンバーの民主党全国大会に行ってきた」と話を始めた。民主党党員のデュカキス教授は、バラク・オバマ民主党候補を称えた。
「米政界で誰よりも、米国の現実を正確に直視している人物だ。一例として、オバマ候補は、イラクからの撤収をめぐる論争に立派に終止符を打った。オバマ候補は、イラクを直接訪れ、16ヵ月以内の米軍撤収問題を取り上げ、イラク指導層の合意を引き出した」
大統領選落選後、政界から引退したデュカキス教授は、10年以上、毎年秋と冬に、米東部(ノースイースタン大学)と西部(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を講義のために往来した。グレーのジャンパーと白い運動靴は、デュカキス教授の「キャンパス・ユニホーム」だ。個人秘書も置かず、行政業務も自分でこなす。
デュカキス教授が教える科目は、「米国大統領学(US Presidency)」と「制度的リーダーシップ(Institutional Leadership)」。一時、本人も熱望した「ホワイトハウスの主人」の地位について、デュカキス教授は学生たちにどう教えているのか。米国の国際的地位に対する辛辣な評価が、彼の答だった。
「米国大統領は、今もそうだが、これからも最も影響力のある世界の指導者になるだろう。しかし、米国は、イラクで愚かな戦争を始め、引き止める国際社会の善意を振り払った。米国が享受した世界的位相にも傷が付いた」
そう言ってデュカキス教授は、「多極体制に向かっている国際社会で、もはや唯一のスーパーパワーは存在しないだろう。そのような時であればあるほど、『真のリーダーシップ』が必要だ」と強調した。
「リーダーシップは、草の根との共感(in touch with grassroots)を前提にしなければならない。私も州知事時代、官邸から毎日公共交通機関を利用して出勤し、市民に会って、彼らから多くを学んだ」
デュカキス教授は、韓国戦争直後1955年12月、軍事休戦委員会所属の国連使節団通信兵として、京畿道汶山(キョンギド・ムンサン)で16ヵ月間服務したことがある。デュカキス教授は、「当時、荒廃した韓国は本当に貧しい国だったが、私には『米国以外の世の中』に目を開かせた大切な学習の場だった」と回想した。
勢いで「指導層に対する不信は、米国だけの問題ではなさそうだ」と切り出すと、慎重だが骨のある答が返ってきた。「韓国の話は慎重にならざるを得ない。しかし、誰も(国民と隔離した)リムジンの後ろでは、何も聞いて学ぶことができない」。
「合理的理想主義者(pragmatic idealist)」を自任するデュカキス教授に、最後に学生たちによく話す教育者としての助言は何かと聞いた。返ってきた答は彼らしかった。
「不可能はない(The Sky is the limit)!」
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