大統領が直接国民と話し合うことには、コミュニケーションをとるという目的もあるが、国政の最高責任者としての国家経営のビジョンを提示し、新たな覚悟を固める機会でもある。大統領に当選後、就任するまでの時期も含めれば、金大中(キム・デジュン)元大統領は4回、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領は8回、このような機会を持った。李明博(イ・ミョンバク)大統領は、9日が初めてだ。就任100日目になる日に実施しようとしたが、ろうそくデモのために延期したのだ。遅くなったが、李大統領が、国民から信頼と自信を回復し、任期初期の失敗と混乱を挽回する心機一転の契機になることを願う。
李大統領が進まなければならない方向と目標は明らかだ。経済を立て直し、国家の先進化の基礎を築くことだ。先の大統領選挙で、李大統領が約束したことでもある。国民はこれを信じて、圧倒的な票差で李大統領を選んだのだ。もはや、行動と実績で示さなければならない。
言葉の約束はこれまでで十分だ。これからは、何をどのようにするのか、具体的な対策とタイムテーブルを出さなければならない。成否は、一貫性と実践力にかかっている。正しいこと、必ずなすべきことを前にしても、一部の反対勢力を意識して再び右往左往したり、「立ち往生」を繰り返すなら、何ひとつ十分に果たせない政権として終わってしまう恐れもある。
国政運営の枠組みをゼロベースで組み直すことから、始めなければならない。どの国政課題も、国家経営には重要である。しかし、すべてを一度に実施することはできない。優先順位を定め、資源と人材を集中的に投入する「選択と集中」の知恵が必要だ。論議を恐れたり避けてはならない。説得することは説得し、克服することは克服しなければならない。それだけの覚悟がなくては、この激変期にどうして政権を維持していくことができようか。
企業の活動と投資を締めつける様々な規制を解くことは、何よりも急がれる。経済を立て直し、先進化の基礎を固めるには、経済の潜在成長力と国家競争力を引き上げなければならず、その動力は、企業に見出すほかない。規制廃止は、雇用創出と国民経済の安定のためにも必要だ。高費用低効率構造の公共部門の改革なしには、先進化を口にすることもできない。形式的な公企業の民営化であってはならない理由である。もっと大胆な公企業改革の構想を提示しなければならない。
法と原則の確立は、基本中の基本である。世界経営研究院の調査で、国内企業の最高経営者(CEO)の10人に8人が、現政府への失望を示し、その理由として、「市場主義と反市場主義が混在したアイデンティティのない政策路線」を最も多く挙げていた点に注目しなければならない。韓米自由貿易協定(FTA)の成功のための国会批准同意も、これ以上先延ばしにする余裕はない。