北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が一昨日、建国60周年記念式典に出席しなかったことを機に、金総書記の健康状態と北朝鮮の将来に、国際社会の注目が集まっている。政府も「金総書記の健康に異常があるのは確かだ」と状況の推移を注視している。1人独裁体制の北朝鮮で、金総書記にもしものことがあった場合には、北朝鮮体制は計り知れない変化に見舞われる可能性が高い。南北関係と東アジアの秩序にも地殻変動が予想される。健康悪化説の真偽を把握するのはもちろん、最悪の状態を想定した多角的な対策作りが求められる。
金総書記の健康異常が事実である場合、北朝鮮が受ける衝撃は1994年、金日成(キム・イルソン)主席が死亡した時よりも、大きくなるのは必至だ。当時、金主席は死亡したが、金総書記が1974年から公式の後継者の位置を確かなものにしていたので、権力構造や体制に大きな変化がなかったためだ。しかし、今回は違う。金総書記には3人の息子がいるが、後継者と呼べる人物がいないため、権力の空白と深刻な混乱が発生する可能性は高い。流血事態の可能性も排除できない状況だ。
金総書記は米国のイラク攻撃時に49日間、公式の場から姿を消していた。今回は先月15日から姿を見せていない。金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が昨日、「何の問題もない」と健康悪化説を否定したことから、金総書記が健康な姿でまた公式の場に現われる可能性もある。ただ、今年で66歳の金総書記の年齢とこれまで確認された病歴だけをみても、北朝鮮の体制変化はそれほど遠からぬ未来のことと思われる。段階的か、突発的かの違いが残っているだけだ。
このような状況は、韓国にとって危機であるが、機会でもある。ドイツ統一がいい例だ。1980年代末から西ドイツは東ドイツからの大量脱出による混乱で苦しんだが、米国、旧ソ連、英国、フランス、そして東西ドイツが「2+4」の協議体制で協力して危機を乗り越え、統一を実現した。北朝鮮の急激な混乱も南北韓だけの問題で片付けられるはずはない。米国をはじめとする周辺国と「ポスト金正日」の北朝鮮を平和的に管理し、究極的には南北統一に導くことができるよう、万全の準備を整えておく必要がある。そのためには、国内的に安全保障体制の確立と統一韓国の将来に対するコンセンサスの基盤作りが不可欠だ。