「大変だけど、兄と弟がいて寂しくないです」
蔚山市南区達洞(ウルサンシ・ナムグ・ダルドン)に住んでいる李ミョンジェ君(仮名、12)は大人のような子どもだ。小さな体格に子どもらしい顔をしているが、同い年の友だちよりも「大人らしさ」が目立つ。
精神遅滞1級の判定を受けた兄のミョンス君(仮名、13)は、精神年齢が生後6ヵ月の赤ちゃんぐらいで、弟のミョンフン君(仮名、6)も、しばらく前まで、精神遅滞3級の判定を受けていた。
母親のチェ某さん(39)は、ミョンジェ君が幼い時に夫と別れて、女手一つで3兄弟を育てている。チェさんは、ミョンスとミョンフンに一日中、影のように付添いながら面倒を見なければならないので、他の仕事ができない。ミョンジェ君家族は毎月60万ウォンそこそこの政府補助金で生計を立てている。
ミョンジェ君はチェさんの一日一日を元気付けてくれる唯一な存在だ。優しい瞳でよく笑うミョンジェは、芸能人が好きでいたずら好きな子どもだが、母親がいない時には兄と弟の世話をする「少年家長」だ。
5年前、ミョンフン君が急に体調を崩して、チェさんがミョンフン君をおんぶして病院へ駆けつけたことがあった。チェさんは、「当時、あまりにも急ぎすぎて家を出たので、ミョンスのことが心配でたまらなかった」と打ち明けた。
急いで病院から帰ってきたチェさんは、ベッドに横になっているミョンス君と、そのそばに座ってうとうとしているミョンジェ君を見つけた。兄が調子が悪いと言ったら、ミョンジェ君が面倒をみているうちに疲れて、2人ともうっとり眠ってしまったもの。ミョンジェ君はトイレでミョンス君の便を処理して、お風呂まで入れてあげたという。
チェさんは、「嫌がることもなく、兄と弟の面倒を見て譲歩するミョンジェのことを考えると、いつも感謝し申し訳なく思う」と目を赤くした。
秋夕(チュソク=旧暦8月15日の節句)が近づいているが、ミョンジェ君家族には特に何の計画もない。体の不自由な2人の息子を連れてどこかへ行くこともできないからだ。
チェさんは、「ミョンジェはこれまで何かがほしいとか何かをしてくれと甘えたことがない。今回の秋夕にはミョンジェだけでも楽しい経験をさせてあげたいのだが…」と言葉を濁らせた。
ミョンジェ君家族を助けている飢餓対策のチェ・ミンジ児童福祉事業チーム長は、「食べ物一つでもお互いに譲りあう家族愛溢れるミョンジェ君家族が、もっと豊かな秋夕を迎えてほしい」と話した。
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