A氏は4年前、取引銀行の支店長の勧めで、M社が運営する積立式株式型ファンドに加入した。毎月50万ウォンずつ貯金し、ボーナス時にはさらに貯金した。昨年10月、3年間の満期となり、元本2500万ウォンが約4300万ウォンへと増えた。総合株価指数(コスピ)が今の約2倍、2200ポイント台まで上がった時だった。意気揚々となったA氏は、満期にも関わらず、さらに多くの利益を期待し、そのまま貯金し、5年満期のファンドにも加入した。
◆4300万ウォンへと増えたファンドは、今では半分に減り、5年満期のファンドはもはや目を覆う。昨年10月以降、総合株価指数(コスピ)が引き続き下り坂を辿り、定年に備えて老後資金を作ろうとしたA氏の夢は、木っ端微塵と消えた。ファンドに加入して数億ウォンの損失をこうむったという人々をよく見かける。銀行からお金を借りてファンドに加入した人らは、高い利子まで加わり、ただことではない。ほとんどのファンドが元本割れし、「元本保証」を巡る法的ないざこざも増えている。
◆金融監督院(金監院)がウリィ銀行に、ある家庭主婦の損失額の50%を賠償するように決定を下した派生商品型「パワーインコムファンド」の場合、名前だけでは投資の危険度は判断できない。定期預金に来た客に、同ファンドへの加入を勧めるなら、「預金とは異なって、元本割れする危険性がある」ことを十分説明する必要があったというのが、金監院の説明だ。顧客に元本保証ファンドという誤解を招いた責任が、銀行側にあるという意味だ。正確な情報が提供されなかった「不完全販売」という特殊な場合に該当する。しかし、銀行が金融監督院の決定を不服とし、訴訟を起こすことになれば、誰が勝訴するかは分からない。
◆複雑な「派生商品」ファンドが多く、投資の初心者らは何がなんだかよく分からない。債権型や株式型のような単純型は稀であり、MMF型や分離課税型、安定型、安定成長型、成長型、資産配分型、派生商品型、マッチング・ファンド、カメレオン・ファンド…。銀行でも正確な説明を行うべきだが、顧客も約款をきちんと確認した上で、契約書に署名するのが基本である。株式市場が活況を帯びている時は、ファンドが定期預金や債権への投資より高い収益を上げることもできるが、底知れぬ下り坂のマーケットでは、元本に責任を持てるファンドなんかない。
陸貞洙(ユク・ジョンス)論説委員 sooya@donga,com