韓国は地上波放送局3社が放送するドラマだけで20本が越える「ドラマ共和国」だ。24時間ケーブルテレビの再放送まで合わせると、一日中ドラマが見られる。相当数のドラマが不倫、殺人、暴力に塗れている。放送通信審議委員会によると、5月現在、地上波放送3局のドラマ21本のうち、不倫劇が33%だ。主婦をメインターゲットにするドラマが、「逸脱と破綻」劇を一日も欠かさず再生産しているわけだ、健康なドラマとはとても言えない。
◆MBCの朝の連続ドラマ「揺れるな」は、自分の秘密を知っている義父が事故で精神を失った後、お粥に睡眠薬を入れる嫁が主人公だ。MBCの月火ドラマの「エデンの東側」も、児童虐待、放火、拷問、殺人が飛び交い、台詞より暴力が多くて「血のドラマ」と呼ばれる。家族みんなが集まる時間帯の毎日夜8時25分に放映されるKBSドラマ「お前は私の運命」も、事あるごとに貧しい人らを嫌悪する言語暴力で階級葛藤を煽り、常識外れの義母を登場させて姑嫁葛藤を極大化させる。30%台の視聴率で10月終映した「初妻クラブ」(SBS)は、父親と息子、婿がみんな不倫の主人公だ。
◆メインニュースと朝の教養番組も主な社会イシューを報道しながら、葛藤を煽り立てる。延世(ヨンセ)大学・言論広報映像学部の金キョンモ教授の分析によれば、4〜7月、地上波3局の夜のメインニュースの牛肉輸入議論とロウソク集会記事1025件のうち、集会反対市民(3件)より参加市民(159件)を取材源にした記事が圧倒的に多かった。公正言論市民連帯が分析した5〜7月、3局の朝の教養番組も牛肉交渉及び狂牛病関連番組が47%(MBC)、23%(KBS)、32%(SBS)でテーマが偏った。タイトルや内容の面でもデモ隊に有利な報道がMBCは90.9%にも上った。
◆娯楽番組を見ても、駄洒落をメインにする内容が主流となっている。「放送は国民の和合と調和の取れた国の発展や民主的な世論形成に貢献すべきで、地域間・世代間・階層間・性別間の葛藤や不道徳な行為、淫乱・退廃・暴力・プロをのぞき見ても言葉の遊びや事とする内容が主流をなす。「放送は国民和合と調和な国家発展及び民主的世論形成に貢献しなければならないし地域間世代間階層間性別葛藤も不道徳な行為、淫乱・風俗・暴力・射幸心を助長してはいけない」と定めた放送法5条の規定はないのと同然だ。国民の財産である電波を使う放送の存立根拠は、品位と教養、そして公正性だ。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com