「出勤する時、妻と娘を抱いて『愛している』と言ったのが最後の言葉でした」
青天の霹靂のような戦闘機墜落事故で、家族を失ったユン・ドンユン氏(37)。
前日まで幸せだった自宅が、灰と化した米カリフォルニア州サンディエゴの事故現場で9日、記者会見をした彼は、喉を詰まらせ、涙を流し、話し続けることができなかった。
ユン氏は記者会見で、「今、私はどのような感情を持たなければならないのかすら分からない。私がどうすべきか教えてほしい」と述べた。
ユン氏は、サンノゼ・マーキュリー紙など米メディアや現地の在米韓国人メディアとのインタビューで、事故の知らせを聞いた時のことを話した。
サンディエゴのある雑貨店で、マネージャーとして働く彼が、事故の知らせを聞いたのは8日、12時頃だった。
自宅近くに住む日本人の友人が電話をかけてきて、飛行機が自分の家に墜落し、火事になったと言った。妻の携帯電話は、何度かけてもつながらなかった。家の近くに到着した時間は、12時40分頃。しかし、消防当局が接近を妨げ、家の前に行くこともできなかった。警察署で待たされたユン氏は、午後7時頃、家族が死んだという知らせを受けた。それがすべてだった。
呆然として、何からしなければならないのか混乱したが、彼は、「妻が望むことが何かを考えて、生きていく」と語った。
敬虔なクリスチャンだった妻の意思だと考えたからか。ユン氏は、記者会見で、「戦闘機のパイロットが苦しまないように祈ってほしい。彼は米国の宝であり、責めたりはしない。彼は(事故を防ぐために)最善をつくした人だ」と言い、許す意思を伝えた。
家族を失った絶望の中でも、教会の人々や警察、消防署関係者に感謝の気持ちを表わしたユン氏のことがメディアで紹介され、彼を励ますメッセージが寄せられている。
家が全焼したため、もはや彼には何も残っていない。
手に持っていたカメラに写された数枚の家族写真がすべてだ。愛した家族も、もう彼の記憶の中に残っているだけだ。
米国防総省は、災害補償対策委員会を構成し、調査を終えた後、補償額を提示し、合意が成立しない場合には訴訟となる。今回の事故は、自然災害ではなく、戦闘機の機械的欠陥、もしくはパイロットの操作ミスである可能性が高いため、補償を受けることは難しくなさそうだ。
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