今回の裁判は、今年行なわれた59件の国民参加裁判のうち、被告人が検察の公訴事実をすべて否認した初めての事件で、13人の証人が出廷した。
裁判官は、2日にわたって18時間以上行なわれた裁判で、陪審員が集中力を失わないか心配した。暑くないか、眠くないか、随時確認し、法律用語や審問の内容が難しい時は、簡単に説明した。
検察は、準備したパワーポイントを使い、ジェスチャーも駆使して、学生に講演するかのように易しくゆっくり裁判を進めた。
弁護人は、普段から母親が息子を大切にし、人生を悲観している点など、陪審員の心を動かす事案に焦点を合わせた。
証人として出廷した警察官も、陪審員の前で、火災発生後の被告人の行動を俳優のように、現実味をもって再演した。
米国ドラマで見ていた陪審員裁判(国民参加裁判)が、韓国内に導入されて1年。申請率が低く、特定の事件に集中しているという指摘もある。しかし、短期間に国民の共感と参加度を高め、少なくとも「半分の成功」は収めたという評価が優勢だ。
最高裁判所によると、今月23日までに受け付けられた223件のうち59件が、国民参加裁判で行なわれた。
26日、光州(クァンジュ)地方裁判所で開かれる裁判まで合わせれば、計60件。当初予想された目標値(100件)よりも低い実績だ。
審理が複雑で、裁判官が除外したり、被告人が有利・不利を考えて撤回したりした件数が多かったためだ。特に、韓国内最大法廷であるソウル中央地方裁判所で2件しか行なわれなかった点も、申請率の低調の一つの原因だ。
特定事件の偏向は、問題点として指摘される。殺人(21件)と殺人未遂(8件)が、全体(59件)の45.7%にもなり、強盗傷害(17件)や性犯罪(8件)、傷害致死(5)などが後に続いた。
被告人が自白し、量刑だけを決める簡単な事件は29件、有罪無罪を争った事件は30件だった。
専門法官である裁判官と一般陪審員との判断の相違は、どれほどあったのか。意外にも、裁判官の判決と陪審員の評決結果は、全体事件の88.1%(52件)が一致した。不一致の事件(7件)の大半は、陪審員は無罪評決を、裁判官は有罪判決を下した。
裁判の結果を受け入れられないとし控訴した事件は、1審判決が出た52件中46件(88.5%)で、控訴率が高かった。しかし、控訴審で結論を覆した事件は、現在まで5件にとどまっている。
陪審員らの裁判に対する満足度は、比較的高かった。陪審裁判後に行なわれたアンケート調査の結果、自分らの役割に対し、95.2%が「満足する」という意見を述べた。91.8%は、「審理中、集中した」と答えた。
しかし、陪審員の半分ほどは、長時間行なわれる裁判に不満を吐露した。4件を除き、すべて1日で終わったが、大半が予定時間後も行なわれたからだ。
最高裁判所は、「逮捕状の請求段階から、国民参加裁判に対する広報を強化し、申請率を高め、国選弁護人や弁護士会と有機的な協力関係を構築し、被告人の弁論権保護に対し、さらに神経を使う」と明らかにした。
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