米国の法廷映画には、検事と弁護人が被疑者の量刑を交渉するシーンがよくある。被疑者が自白した場合、軽い容疑で起訴したり、量刑を軽くする「プリーバーゲニング(plea bargaining)」だ。しかし、米海軍でコンピューター専門家として働いた韓国系ロバート・キム氏のように、96年にスパイ容疑で逮捕された時この交渉に応じたものの、最高刑が宣告されたケースもある。これと似た制度に免責条件付き供述(immunity)というものもある。被疑者兼参考人が第3者の犯行を証言し、量刑の減免を受ける制度だ。
◆林采珍(イム・チェジン)検察総長が10月に、プリーバーゲニングの必要性を力説したのに続き、金慶漢(キム・ギョンハン)法務部長官は、新年業務報告で、免責条件付き供述制度を導入すると述べた。公務員の収賄事実を知る関係者が証言すれば、供述者の量刑を減免するというものだ。特に、贈収賄の罪は、両者が口をつぐめば、物的証拠を見つけることが容易ではなく、捜査は難航する。最近の「盧建平(ノ・ゴンピョン)ゲート」や公企業捜査でも明らかになったように、増収賄の手法がますます巧妙になる傾向があり、検察の困難は十分に理解できる。
◆事実、韓国検察もこれまで、知ってか知らずかこのような交渉を時折、活用してきた。金大中(キム・デジュン)政権時代、現代(ヒョンデ)グループが権魯甲(クォン・ノガプ)、朴智元(パク・チウォン)氏に巨額の賄賂を渡したという決定的な証言をした李益治(イ・イクチ)元現代証券会長を起訴しなかったことが、そのケースだ。犯罪者との交渉には、憂慮と反対の声も多い。同制度は、米国のように陪審裁判が定着した国で、捜査と起訴、裁判手続きにかかる天文学的コストを減らすための方法として始まった。供述拒否権と弁護人の活動の徹底的な保障として、自白を引き出すことが星をつかむような米国の独特な制度だといえる。
◆犯罪者との量刑取り引きは、何よりも正義観念に反するという弱点がある。ややもすると、科学捜査よりも交渉に力を入れる悪しき風土を生み、密室交渉で検察に対する信頼を墜落させる危険もある。罪と罰の比例の原則や「同じ犯罪に異なる処罰」という公平性の問題に対する論議を呼ぶ恐れがある。そのような制度よりも、「刑事コロンボ」のように、徹底的に証拠を探し回る検事が多くなってこそ、この国の検察が生きる。
陸貞洙(ユク・ジョンス)論説委員 sooya@donga.com