2009年の元日の朝だ。今年は全世界が、経済危機を突破するのか、より大きな苦痛の泥沼に落ち込むのか、その岐路に立たされている。今、韓国経済は、97年末の通貨危機の状況のような急性ではないものの、当時に劣らず苦しい環境に陥っている。11年前の通貨危機は、アジアの一部の国に限られていたので、国際通貨基金(IMF)の緊急支援を受けることが比較的容易だった。世界経済の好況で輸出が増え、危機克服を牽引した。当時は健全だった国家財政の力で、金融の不良債権を補填することができた。
しかし、グローバルに金融と実体経済の危機が同時多発的に拡散し、韓国の主要輸出対象国である米国、中国、欧州連合(EU)でも、景気低迷の溝が深まっている。すでに韓国の輸出は、前年同期に比べて2ケタの減少率を見せている。内需市場が小さいうえ、輸出まで墜落すれば、経済の活路はない。
そのうえ、米国の保護貿易強化の兆しが世界的な貿易萎縮につながれば、韓国は最大被害国になる恐れがある。韓米自由貿易協定(FTA)が発効すれば、難関を切り抜けるのに助けになるものと思われるが、両国の議会の反対勢力が抵抗し、もどかしいばかりだ。推進中の韓国・EUのFTA交渉も、スピードをつけなければならない。
市場の危機状況では、政府の役割がさらに重要になる。韓国も世界の主要国のように、迅速かつ果敢な大規模景気対策と構造調整が必要だ。いかなる政策も、すべての企業を助け、現在の雇用をすべて維持し、同時に新たな雇用を十分に生み出すことはできない。公企業であれ民間企業であれ、放漫な経営と非效率で競争力を失った部分は、合理的に構造調整を誘導してこそ、競争力が培養され、新たな雇用も創出される。退出が容易であってこそ進入が容易になり、解雇が柔軟であってこそ、雇用が増えるのが市場の原理だ。
新年には特に、雇用創出が期待には到底及ばないものと予想される。労使が減員よりも減俸、解雇よりもワークシェアリングで、苦しい状況をともに克服する知恵と譲歩の実践が切実だ。
経済を立て直し、国民生活の苦しみを減らすために、政府と政界、そしてすべての経済主体が協力して知恵を集めれば、できないことはない。韓国には、危機克服の遺伝因子がある。大韓民国は、半世紀前の戦争の廃墟から立ち上がり、産業化と民主化を同時に成し遂げた類例のない国である。そして、その主役がまさに、韓国国民である。
グローバル化と競争から取り残された脆弱階層の支援する政策とセーフティネットが、さらに強化されなければならない。この過程で、財源と政策手段の配分をめぐり、大企業と中小企業、正規職と不正規職、金持ちと貧しい人の葛藤が現われる恐れがある。ただ、弱者のためという名分の下、大企業と金持ちを叩く政策は、むしろ経済の活性化を妨害し、庶民により大きな苦痛を与える恐れがあることを認識しなければならない。
李明博(イ・ミョンバク)政府は、国益と国民生活のために何をするのか、より明快に国民に説明し、理解を求めなければならない。李大統領は、国家のアイデンティティを否定する集団ではない限り、反対勢力を最大限に包容し、積極的に疎通するリーダーシップを示す必要がある。そうしてこそ、より多くの国民が、経済危機打開の努力に賛同するだろう。世界各国は、経済危機脱出のために、国家の潜在力を最大限に結集させている。にもかかわらず韓国では、一部勢力が詭弁を並べ立て、経済回復に注がなければならない国力を分散させている。不法と暴力で偽りの煽動をする勢力に対しては、法治の原則をはっきりと示す必要がある。09年は、経済危機突破とともに、国家と社会の正常性を取り戻す「大韓民国再構築の年」にならなければならない。目の前の困難に捕らわれ、未来を準備できないことほど愚かなことはない。私たち次第で、先進国入りを繰り上げることもでき、ここで座り込むこともできる。人材を養成する教育、未来の食糧を作り出す科学技術に、好況の時よりも積極的な投資をしなければならない。情報技術(IT)ナノバイオ代替エネルギーといった未来の成長動力分野の研究開発にも、果敢な投資が必要だ。4大河川整備事業も、究極的に未来のための投資につながらなければならない。
苦しいからといって立ちすくんでいてはいけない。和合と賛同を引き出せる政治指導者のリーダーシップと国民の信頼さえあれば、荒波をいくらでも切り抜けることができる。私たち皆が、悲壮な覚悟で、オールを漕ごう。希望を持って、元気を出そう。先進大韓民国に向かって、再び走り出そう。未来が驚くほどの、共々の走りを見せようではないか。