軍隊は、戦争に備える組職の特性上、上司の命令に服従することが避けられない。敵を前にして、進撃や射撃を兵士の自由意思に任せることはできない。戦時に、指揮官に銃殺の権限まで与えるのはそのためだ。韓国戦争当時、ウォルトン・ウォーカー米第8軍司令官は、「釜山(プサン)に後退してはいけない。最後まで戦わなければならない」と指示し、「非民主的で狂信的な命令」という一部の非難を浴びたことがある。これに対し、ウォーカー将軍の上官、ダグラス・マッカーサー国連軍司令官は、「軍隊に民主主義はない」と一喝した。
◆最近、軍の内外で、「民主軍隊」という用語がよく登場する。国防部は、「先進兵営文化」という展望の下、「夢と目標がある軍隊」、「人間尊重の軍隊」、「任務に専念できる家庭のような軍隊」などをスローガンに掲げた。そのとおりなら、入隊する若者や両親が心配することはなさそうだ。自由時間も大幅に増やし、情報格差の解消、語学勉強、学位および各種資格取得まで可能だ。仲のいい友人のような部隊に服務することもできる。搬入が禁止された禁書リストの非民主性問題のようなものさえなければ、実感できる変化だ。
◆職業軍人制度として将校集団が形成されたのは、1800年代以降だ。(オン・マングム著『軍隊社会学』)。それまで欧州では、主に傭兵や貴族出身が将校団を形成した。傭兵将校は、傭兵の生計に責任を負う「事業家」で、貴族将校は、名誉と冒険を追求する「趣味の活動家」だった。兵士は、好きな将校を選ぶことができた。しかし、今日の兵役制度では、兵士が指揮官を選ぶことはできない。指揮官の民主的リーダーシップ問題が提起される理由だ。
◆陸軍は、中隊長、小隊長など初級指揮官に対し、兵士の評価制を実施する計画だ。評価結果を人事考課に反映することはないと言うが、指揮官は緊張せずにはいられない。問題は「民主」と「強軍」をいかに両立させるかにある。民主を掲げすぎると、軍紀と精神戦力を基にした強軍育成に支障を来たす恐れもある。将校の民主的リーダーシップ開発、将校と兵士の信頼関係に役立つ細心のプログラムが必要だ。
陸貞洙(ユク・ジョンス)論説委員 sooya@donga.com