ハンナラ党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)院内代表がある飲食店で、一般市民を侮辱したというUGC(ユーザー製作コンテンツ)の動画がネットに流れた。しかし実際は、米国産牛肉輸入反対集会に参加したと見られる数十人が、逆に洪院内代表に悪口を浴びせかけていた。目撃者がいなかったら、否応なく「インターネットの魔女狩り」にかかってしまうといううその動画である。米国産牛肉関連デモの当時、ポータル・サイトに「女子大生の死亡説」や関連写真を掲載したチェ某氏は昨年末、懲役10ヶ月の実刑を言い渡された。しかし、ネット空間には今も虚偽の事実があふれている。
ネットだけではない。昨年、狂牛病関連の核心内容を「歪曲報道」して、米国産牛肉デモの引き金となったMBCの番組「PD手帳」に対して、在米韓国人1020人は12日、「米国地元の人々から笑いものにされるなど、精神的な被害を受けた」として、10億2000万ウォンの損害賠償と訂正及び謝罪放送を求める訴訟を起こした。ネット・ユーザーがインターネットに、地上波の仲介者が地上波に、うそや憎悪を流して国が混乱に陥ることになれば、メディア融合時代の到来は祝福ではなく災難になりかねない。
人間には事実とは関係なく、信じたいことだけ信じようとする「確認偏向(confirmation bias)」があるという。米国産牛肉輸入を巡るデモの際、歪曲された情報を盛り込んだ「メディア・ウイルス」があっという間に広まったのもそのためであろう。しかし、知識や情報の宝庫として使われるインターネットが、なぜ韓国ではとりわけ過度にうそや憎悪、対立の媒体となるのか、残念でならない。
「女子大生死亡説」を流布したチェ某氏のように、単に「人気者になりたくて」とか、いわばインターネット論客「ミネルバ」が「通貨危機を食い止めたかった」というのが本気であれどうであれ、意図的にうそや憎悪を流し、社会を混乱に陥れる勢力があるのも事実である。目に見えるうそがメディア空間で飛び交っているのに、真実が弾圧でも受けるかのように国民をミスリードしようとする一部のネットユーザーや媒体もある。
誰もがその気になれば、特定の相手を傷つけるコンテンツを作って流すことができ、被害者はどうすることもできず、被害をこうむるような状況をいつまで放置するわけにはいかない。誰もが情報の発信者となりうるウェブ2.0が、韓国では「うその天国」として位置づけられれば、その被害は社会全体に回ってくる。インターネットであれメディアであれ、虚偽の事実で社会に被害を与えることになれば、法的責任を問う制度や慣行を確立すべきである。