金壽煥(キム・スファン)枢機卿の弔問の行列は、前日よりさらに増え、延々と続いた。2キロ近い行列で3時間以上待たされたが、市民らの表情は穏やかで幸せそうだった。
「人々でこんなに込んでいるのに、割り込みは全くありませんね。枢機卿がお望みになったのは、ほかならぬこのようなことだったのではないでしょうか」
18日午後、ソウル中区退溪路(チュング・テゲロ)にある世宗(セジョン)ホテルの前で、順番を待っていたムン・ヨンイさん(50)は、長蛇の列を眺めながら信じられないという表情をしていた。
二日間明洞(ミョンドン)聖堂を訪れた人は20万人あまり。様々な人々だったが、一様に落ち着いた様子だった。
人が大勢集まるところなら、よく目にする割り込みや言い争い、大きな声は見当たらなかった。かえって、身体の不自由なお年寄りには「先に行くよう」に順番を譲る様子だった。
大勢の人々が集まっていたためか、いたるところに警察が配置されていたが、交通整理や「長蛇の列はどこまで続いているか」という市民らの質問に答えるのが、全ての仕事だった。
明洞聖堂の主任神父である朴シンオン・モンシニョールは、「秩序を守り、列に並んでいる弔問の行列が、あまりにも美しい」と感激していた。
同日午後2時から明洞聖堂の正門前に設置された「愛の臓器寄贈運動本部」のブースにも、弔問を終えた市民が集まった。ファン・ジイン広報チーム長は、「普段、街頭でのPRに応じてくださる方々は少ないが、今日はすでに100人近くの方々が来て下さった」と語った。
このような現象は宗教や地域、イデオロギー、階層を越えた金枢機卿の人生に対する畏敬の意でもある。
金枢機卿は国民に愛や譲歩、犠牲という精神的な遺産を残したが、個人としてはいかなる物質的な遺産も残さなかった。
ソウル大教区によると、金枢機卿は引退後、ほかの神父らと同様、毎月250万ウォンを受け取った。しかし、お金の管理は秘書神父に任せ、必要な時に金を受け取って使用した。現在、金枢機卿の通帳残高は、約1000万ウォン。
しかし、カトリック教の関係者は、「枢機卿は精霊祝日や祭日になると、聖書やロザリオ、十字架など聖物や本を買って、プレゼントされていましたが、まだ費用処理されていないものもある」とし、「これを返済すれば、かえって金が足りなくなる可能性もある」と伝えた。
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