舞台の上から見下ろした客席は真っ暗だった。500人あまりの観客の後ろに座っている審査委員4人の目だけがきらきらと光っていた。観客らの拍手が終わると、人気グループ、バイブの「Promise U」の間奏が流れ出した。半月間1000回近く練習してきた曲であった。
4人組みの男性ボーカルグループとしてオーディションに出場した金ソンウン君(18)は、手にしていたマイクをぎゅっと握った。右のメンバーの歌に続けてクライマックスを歌わなければならない瞬間だった。
「明るい笑みで僕に近づいてきた君はどこへ、また僕もどこへ…」
金君は普段練習した通り、ゆっくりと声を上げた。しかし、客席が騒ぎ始めた。審査委員らの表情も硬くなった。ほかのメンバーらから脇をつつかれるまで、金君はマイクが故障したことにも気づかず、歌を歌った。
あちこちでため息が聞こえた。金君は目の前が真っ暗となった。先に舞台に立った「ちびワンダー・ガールズ・チーム」の子供らが、控え室に入るなり、泣き崩れた場面が重なった。
金君はやっと大丈夫だという手振りを示しながら、新しいマイクを受け取った。第2節は無事に終えた。しかし、控え室へと向かう間、こらえていた涙が流れ出した。
国内の代表的な芸能企画会社「JYPエンターテインメント」の公開採用4期目の研究生のオーディションの決選にまで居残った金君は、7000対1の競争を勝ち抜いた。「ピー」や「ワンダー・ガールズ」を排出したJYPの研究生になるため、全国から2万人あまりがこのオーディションに応募した。1月の1ヵ月間、全国6つの圏域で行われた地域予選で33人が選ばれた。
この決選進出者らは歌やダンス、演技部門など10チームに分かれて、2週間の厳しいトレーニングを受けた。この過程で流した汗についての評価を受ける席が、26日、ソウル江南区(カンナムグ)の繊維センターで開かれた最終のオーディション舞台だった。
同日午後9時ごろ、最後の参加チームのダンス公演が終わると、オーディション会場には緊張が漂った。審査委員団が最終合格者3人を選び出すための協議に入ったからである。それまで、参加者33人は、再び舞台に上がった家族らを迎えた。
金君は、右側の端に頭をたれたまま立っていた。司会者に審査の結果が書かれたカードが手渡された時も、金君はやけ気味で、チームメンバーらと共におしゃべりをしていた。
「では、3位から発表いたします。出場番号21番、キムム〜ソン〜ウン!」
金君はさっと頭を上げた。競争倍率7000倍の狭き門を通って、夢見ていたJYPの研究生になったのである。
●オーディション、研究生に向けた夢
江原道太白市(カンウォンド・テベクシ)や慶尚南道梁山市(キョンサンナムド・ヤンサンシ)など、全国のいたるところから集まった参加者らは、小学校を卒業したばかりの少女から24歳の若者まで、年齢もさまざまだった。地方出身の参加者らは、周辺の親戚の家や旅館に泊まりながら、トレーニングを行った。あるダンス・チームの母親は、自ら公演のための服装をデザインしてくるほど、家族らの支援競争も激しかった。
非平準化地域の名門校である京畿道安山(キョンギド・アンサン)の古棧(コザン)高校3年生の金君は、オーディションの準備期間の間も、勉強をおろそかにしなかったという。0時限を終えてから早退の確認を受けた後、ソウルの研究室を行き来しながらオーディションの準備をしてきた。
最後の練習のあった24日朝、金君は、学校の制服姿で地下鉄漢陽(ハンヤンデ)前の駅へと向かっていた。通勤ラッシュで満員の電車の中で、金君は耳にイヤーフォンをつけて、英語の聞き取りテープを聞きながら、単語を覚えた。翌日の0時限の際の聞き取り試験を受けるためだった。
数学教師である金君の父親は、息子が歌手を夢見ることを余り好ましく思わなかった。金君は勉強や歌、両方とも一所懸命に頑張って、上位圏大学の実用音楽学科に入ることを約束してから、ようやく認めてもらうことができた。
金君は午後6時の練習が終わると、安山の実用音楽塾へと場所を変えて、午後11時まで一人で練習を続けた。
●「才能と情熱を選抜する」
ソウル江南区鋻潭洞(チョンダムドン)のJYPエンターテインメントの前に立ち並んだ大勢のファンは、「ピー」や「2PM」などの現役スターらのファンのみではない。これらのうち相当数は、JYP研究生の名前の書かれたピケットを手にし、「練習の応援」に駆けつけたファンである。
スター志望生らの競争が激しく、芸能人になるための関門に過ぎない芸能企画会社の研究生は、ただの研究生ではない。大手芸能企画会社の募集の競争倍率は優に数千倍を超え、最近は「芸能受験生」という新造語まで登場した。
これらの「芸能受験生」らのオンライン・コミュニティ、「星を夢見る子供たち」は、会員が8万2000人で、自主的にオーディソンを開くほどの盛況振りである。また、放送芸能関連学科が、全国136大学に開設され、1年間に排出される卒業生だけでも1万400人余りに上る。
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