景気が悪化すると、貧しい人が一番先に直撃弾を受ける。東西古今を問わず、不況の衝撃は経済共同体で一番弱い立場に置かれている低所得層から襲うからだ。「裸の経済学」を書いた英国のジャーナリスト、チャールズ・ウィーランは、「現実では良心より懐がさらに大きな力を発揮する」とし、「景気低迷で不況に陥った時、最も大きな被害を受ける人は医者や大学教授ではなく、職場で首になる労働者たちだ」と言った。原因がどこにあるにせよ、経済的貧困層の増加は深刻な政治社会的な不安につながりかねない。
◆世界各国が冷え込んだ消費を回復させるため、現金や消費クーポンを国民に振り分ける政策を矢継ぎ早に打ち出している。韓国政府も補正予算の編成を通じて、低所得層を中心に現金かクーポンを支給する案を検討している。従来だったら、現金や現物支援の政策が勤労意欲を落とすという批判が少なくなかったはずだ。しかし、世界中が総体的な需要の落ち込みに苦戦し、伝統的な経済学のパラダイムが崩れている現実では、このような対策でも打ち出さざるを得なかっただろう。実際、最近各国が発表した対策は、福祉政策に劣らず、景気浮揚や社会葛藤を緩和する政策の性格が強い。
◆現金とクーポンのどちらがより効果が高いかついては意見が分かれているが、今は物事の長短に対する原論的な論争を長らくするほど暇な状況ではない。低所得層に対する実質的な支援と全般的な景気のてこ入れといった「二兎」を取るのに、どちらが少しでもさらに役立つのかを迅速に判断し決定を下さねばならない。我々の現実では現金の支給が消費を促進するよりは、貯蓄などを通じてお金が再び金融機関に流れる可能性が高いと見れば、クーポンの方がより良い選択ではないかという気がする。
◆その場しのぎの緊急措置という性格を持つクーポン支給の効果を極大化するためには、いくつかの点が考慮されなければならない。まず、有効期間を長くするよりは短くして、早いうちに流通されるよう工夫する必要がある。また、クーポンが使えるものと対象の範囲は広くするのが望ましい。現金と商品券の長所をできるだけ多く結合した方式のクーポンであってこそ、もらう人にも恩恵が届きながら、内需促進の効果も出てくるのではないだろうか。
権純活(クォン・スンファル)論説委員 shkwon@donga.com