1971年、米スタンフォード大学のフィリップ・ジンバード教授(社会心理学)は、平凡な女性8人を4人ずつに分け、一つの集団は覆面をかぶらせ、もう一つの集団は素顔で名札をつけさせた後、被実験者に電気衝撃を加えさせる実験を行った。その結果、覆面集団が身元が分かる集団より、2倍以上強い電気衝撃を加えたことが分かった。覆面と匿名の中に隠れた人間が、悪魔的な本性を現すことを示した実験である。
◆この3年間で発生した韓国内暴力デモのうち、覆面着用者の出現比率は06年=62件中36件(58%)、07年=64件中38件(59%)、08年=77件中55件(71%)だった。暴力デモと覆面の間の相関関係が日増しに高まっている。ハンナラ党の申志鎬(シン・ジホ)議員などが昨年、「身元が明かさない目的のため、マスクのような覆面道具をつけたり、つけさせる行為はやってはならない」という条項を新設した「集会及びデモに関する法律」の改正案を国会に提出した。身分を隠して振るう暴力を阻止するための法案である。ところが、行政安全委員会で、「集会及びデモの自由を侵害する」という理由から野党が反対し、係争中となっている。
◆フランス政府は20日、公共場所での覆面デモを禁じる総理令を発表した。それに違反すれば、1500ユーロ(約265万ウォン)まで罰金を科し、1年内に再び違反した場合は、最大3000ユーロ(約540万ウォン)へと増える。今年4月初頭、フランス東部の都市、ストラスブルでNATO(北大西洋条約機構)首脳会談が開かれた際、覆面をした過激デモ隊が、車両破損やガソリン・スタンドへの襲撃など、暴力デモを行った後、世論が高まったことを受けての措置である。覆面デモの禁止は1989年、ドイツで導入された後、スイスやオーストリアなどへと広がる傾向を見せている。
◆フランスでは、「集会やデモの自由が制限される余地がある」という懸念の声が持ち上がり、処罰のレベルを下げたのがこの程度である。これに対して、「独裁的な発想だ」という批判の声を聞こえない。大韓民国では覆面をかぶったデモ隊が、警察に暴行を加え、ともすれば、竹やりや鉄パイプが飛び交う無法状態が繰り広げられる。集会やデモの自由は、警察官を殺傷し、国や個人の財産を壊してもよいというような無制限の自由ではない。
朴成遠(パク・ソンウォン)論説委員 swpark@donga.com