多国籍企業のマイクロソフト(MS)の最高技術責任者(CTO)を務めたネイサン・ミアボルド(50)氏は、昨年10月、ソウルに来た。自分が設立した特許専門会社のインテレクチャル・ベンチャーズ(IV)の韓国事務所のオープンの時だった。彼は、「韓国の大学と企業、そして専門の発明家のアイデアを掘り出し、世界に販売する腹案を持っている」と話した。10社あまりのグローバル企業と年金・基金ファンド(ペンションファンド)を含め、30以上の投資者が出した50億ドルで、特許と特許が可能なアイデアを買い入れた。企業がこの会社を注視するのは、巨額の特許訴訟が怖いからだ。
◆三星(サムスン)電子は、05年、他の特許専門会社のインターデジタルから特許訴訟を起され、1億3400万ドルのロイヤルティを支払った。LG電子は、訴えられる前に2億8500万ドルのロイヤルティを支払うことで合意した。特許専門会社は数十億ドル規模のファンドを立ち上げ、世界の随所で特許を買い入れた後、訴訟を通じて特許料を受け取るため、「パテント・トロール(Patent Troll=特許怪物)」という悪名で呼ばれる。彼らは最高レベルのエンジニア、物理学者、知識財産専門家らを数百人以上抱えている。
◆世界的なネットワークを持っている特許専門会社は、各国で教授らの研究活動を支援し、特許を共同保有するやり方で特許を確保している。政府や企業からそっぽを向かれてきた大学教授や研究者としては技術とアイデアを評価してくれる彼らはありがたい存在だ。IVも既にソウル大、高麗(コリョ)大、延世(ヨンセ)大、カイスト、韓国外国語大など国内8大学から200件あまりの発明アイデアを買い入れる契約を結んだ。完成した特許技術だけでなく、「稚魚の技術」まで確保したわけだ。
◆このように売られていった特許が、後日、韓国の企業にブーメランになって巨額の特許料を要求してくる可能性もある。政府と企業は訴訟で負けた場合、巨額の損害を被り、企業は生死の分かれ目に立たされる羽目になるかも知れない。それなのに、一部の大企業を除いては、特許の出願や管理に十分気を使うのが容易でない。特許専門会社は特許怪物と呼ばれるが、法律に基づいた合法的なビジネスを展開する。政府も企業も知的財産の重要性をさらに深く認識し、研究者の創意的な努力をちゃんと評価してはじめて、被害を減らすことができる。
朴永均(パク・ヨンギュン)論説委員 parkyk@donga.com