「安心して泳げるところができたのが、夢のようだ。偏見に満ちている社会で水泳一つで頑張ってきた甲斐がある。障害者に対する温かい視線も感じられる」
「ロボット足の競泳選手」金セジン(12)君は、先天性四肢無形性障害で両足がなく、右手の指も2本しかない。しかし、夢を広げるチャンスがやってきた。水泳場がなくて、全国を転々としてきた彼に定着できる場所ができた。先月30日、京畿道華城市餅舗洞(キョンギド・ファソンシ・ビョンジョムドン)のユエンアイセンター水泳場がそこだ。金君と母親のヤン・ジョンスク氏(40)は明るい笑顔を見せていた。
「このような日が来るとは思ってもみなかったです。息子が好きな水泳をやらせようと、何度も頭を下げて、水泳場の掃除をするなど、数え切れない侮辱を我慢してきたんです」。
ヤン氏は金君の産みの母ではない。生後5ヵ月になった金君が児童養護施設に捨てられた時、ボランティアに行って出会った。金君を養子にして育ててから11年。特別待遇を望んだことは一度もなかった。障害を持っているということだけで受けるしかない全ての蔑視は胸にしまい続けた。
金君は5歳の時、リハビリのため水に接し、水泳を学んだ。4年前には障害者水泳の有望株と挙げられた。4月、英国で開かれた障害者競泳チャンピオンシップ等級S7(水泳の肢体障害はS1〜S10に区分、S1が最も重症)に参加し、金メダル3個、銀メダル4個を獲得した。
金君は障害者リハビリ専門病院の建立を推進する非営利公益団体であるプルメ財団広報大使として活動していたことを機に、ユエンアイセンターに定着することになった。3月、華城市がプルメ財団に病院の敷地を提供する行事に参加したが、崔永根(チェ・ヨングン)華城市長が金君の事情を聞いて、潔く練習場所を提供した。崔市長は、「指導者を迎え入れて、障害・非障害の子どもが共にする幼少年チームを作る」と約束した。
専門家らは、金君の可能性を高く評価した。泳ぎ方の姿勢が良く、頑張りやなので「障害者競泳の朴泰桓(パク・テファン)」に成長する可能性が高いという。彼の主種目も朴泰桓と同じクロール200メートルと400メートルだ。
金君は1日3時間以上、水の中で過ごす。「水の中が楽だ。力を入れずに浮いて腕さえ動かすと、前へ進むので、とても気持ちいいです」というのが彼が水泳に夢中になっている理由だ。
ローマ世界競泳選手権大会を念入りに見守ったという金君は、「朴泰桓選手が熱心に最善を尽くしたのに、成績がよくなくて残念だ。再び立ち直って世界を制覇する姿を見たい」と話した。
金君は、「朴泰桓選手のように見事に五輪の金メダルを首にかけるのが夢だ」と言って、明るい笑顔を見せた。12年ロンドンパラリンピック出場がその夢に向けての最初の目標だ。
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