スティーブン・ハーパー・カナダ首相は最近、北米自由貿易協定(NAFTA)の首脳会議でバラク・オバマ米大統領と顔を合わすたびに、「バイ・アメリカン(Buy American)条項について文句を言った。米国の景気てこ入れ事業に対して、自国産の原材料のみ使うように定めた条項のため、カナダ企業が被害をこうむっているという内容だった。最近のカナダには、「米国の保護主義に立ち向かわなければならない」という空気が充満している。11日付のワシントン・ポスト紙によると、カナダでは公共物品を調達する際は、自国製品を優先的に購買しようという決議案が相次いで採択されている。
このように、グローバル景気低迷が続く中、貿易障壁を巡る国家間の神経戦が続いている。先進国同士のみならず、中国やインドのような新興経済大国同士、あるいは先進国と発展途上国との法律紛争も急増している。景気回復のための「全面的な貿易闘争」が繰り広げられているのだ。
●いたるところに貿易ライバル
世界貿易機関(WTO)の「09年の国際交易報告書」によると、各国の今年の反ダンピング関税は昨年より28%増加した。セーフ・ガードのような貿易保護措置は、今年上半期の場合、前年同期より31%増となっており、業界の輸入規制要求件数も34%増加した。今年の世界交易規模は1年前に比べ3分の1ほど減少した。
輸出が閉ざされた新興経済大国は最近、WTOに先進諸国を対象に提訴しながら、本格的な対応に乗り出した。中国は今月初め、自国製ボルトや家禽類への貿易障壁を取り上げ、欧州連合(EU)や米国をWTOに公式提訴した。中国商務部は当時、「今後はWTOを積極的に活用し、貿易障壁に立ち向かうつもりだ」と明らかにしたことがある。インドも最近、EUの医薬品通関制度を巡り、WTOへの提訴を準備している。
WTOへの提訴は、かつてのように先進国を中心に行われたものとははっきりその流れが変わっている。かつては、先進諸国が途上国によるダンピングや貿易規制に対して主に問題を提起してきたものの、今は新興経済大国が先進国市場に進出するための反撃の動きが激しくなっている。
相互牽制しようとする新興経済国間の競争も激しい。この10ヶ月間、中国を相手にWTOに寄せられた77件の紛争件数のうち、40%はインドが占めるほど。
●今後、貿易紛争はさらに増える模様
最近、グローバル交易が徐々に増えつつあるという希望を込めた声が出ている。しかし、専門家らは景気回復の勢いが予想より遅く、失業問題が足かせとなる可能性が高いだけに、油断は禁物だと警告した。WTOの報告書で、「各国政府は景気低迷のため、貿易障壁を強化するよう強いられており、これはいつか、危険なほど膨らみかねない」と指摘した。
WTOによる規制を避けることのできる地方政府レベルの物品調達事業のような場合、輸入製への差別政策を防げる適当な方法がないのも問題だ。7年以上続いているドーハ開発アジェンダ(DDA)の交渉は事実上、失敗に終わっており、依然その代案は出てこない。また、気候変動政策を巡り、発展途上国は、「グリーン障壁という事実上の貿易規制」と反発しており、今後、紛争はさらに増える可能性が高い。
lightee@donga.com