新型インフルエンザがもし大流行の段階に入ることになれば、死亡者は最大で2万人に上るだろうという政府の試算がまとまり、衝撃を与えている。抗ウイルスやワクチンなどの防疫対策がない場合、全人口の20%が感染し、0.04%が死亡すると試算した場合を想定した最悪のシナリオだ。しかし、新型インフルエンザの予防や治療に万全を期すものの、過度に恐怖をあおる過敏反応は副作用のみ助長する恐れがあることも考慮に入れるべきだ。
新型インフルエンザの感染力が高いのは事実だが、致死率は一般インフルエンザより高くはない。これまで発生した3500〜4000人の患者のほとんどが入院や自宅での隔離治療を通じて、完治したり治りつつあり、死亡者は2人に止まっている。致死率は0.05%前後と、メキシコの1〜1.5%、米国の0.2%より一段と低い。この程度は、季節型の一般インフルエンザの致死率より低い。
昨日始まった登校の際の体温検査も、行き過ぎた対応だったという判断だ。2つの耳型体温計を持って体温を測り、児童や生徒らが校門をくぐるのに1時間以上かかった学校もある。実効性も疑問だが、待っている間、幼い子供らがどれだけ不安で、あせりを感じたのか、気遣うべきだった。新型インフルエンザのため、始業を遅らせたり、休校に入った学校は48校に増えた。安秉萬(アン・ビョンマン)教育科学技術部長官は、「新型インフルエンザの患者が発生したからといって、休校するのは望ましくない」と、冷静な対応を求めた。
患者は急増しているのに、タミフルやワクチンを早期に十分な物量を確保できず、国民の心配が大きいのも事実である。だからといって、抗ウイルス剤が全ての患者にとって万能薬となるのではない。病院では普通の風邪の患者たちでさえ、「タミフルを処方してほしい」と駄々をこねる状況が起きている。代表的な抗ウイルス剤「タミフル」は、昨年流行した鳥インフルエンザには効き目があったものの、青少年が服用する場合、異常な行動を誘発するという報告もある。
防疫当局は、新型インフルエンザが疑われる場合の行動要領や拠点病院のような情報を、国民にしっかりと提供し、患者を早期発見して治療することに力を入れるべきだ。インターネットに「新型インフルエンザ」とだけ打ち込んでも、疾病管理本部の新型インフルエンザ関連のホームページから最新情報を手にすることができる。新型感染病に対して警戒を行うのは当然だが、過度な恐怖心のため経済が萎縮されたり、社会的な混乱を招いたりする事態は防ぐべきだ。
こんな時こそ、衛生に気をつけることも重要だ。外出先から帰った時は、手を洗うだけでも予防に役立つ。