北朝鮮のメディア政策に変化の風が吹いている。北朝鮮では、メディアは、指導部の意志を反映する大衆宣伝の道具という点で、変化の気流が注目が集まっている。
●部分的に西欧の様子も伝える
北朝鮮住民を対象にした唯一のテレビ・チャンネルである中央放送の変化は、7月3日の大同江(テドンガン)ビールのコマーシャルを皮切りに感知された。政治宣伝一辺倒の北朝鮮放送に初めて商業広告が登場したのだ。その後2ヵ月間、開城(ケソン)人参、コスモスヘアピン、玉流館(オクリュクァン)のうずら料理のコマーシャルが相次いで放映された。
最近、外国の科学技術や文化などを紹介する番組も増えている。ゴールデンタイムにロシアのバレー「白鳥の湖」を1時間30分放映するかと思えば、かなり依然に姿を消した「国際常識」、「世界の動物」、「海外文化探訪」などの海外の情報番組も最近復活した。このような番組を通じて、西欧諸国の様子もうかがうことができる。北朝鮮軍合唱団の歌手が軍服を着てギターを弾きながらイタリアの歌を歌う姿も数日前に放映された。北朝鮮選手が出場した試合だけを選んで見せていた慣行から、最近では、ドイツで行なわれた「世界陸上ベルリン大会」の主要競技をダイジェストで放映したりもした。
●外国映画のCDを販売
外国映画への北朝鮮当局の態度の変化も最近感知されている。国営「ハナ電子」で製作された外国映画のCDが全国で販売され始めた。外国映画は、主に平壌(ピョンヤン)市民だけが見ることができる万寿台(マンスデ)テレビで放映されたものなどで、CD1枚は北朝鮮ウォンで1500ウォン(約500ウォン)、これより容量が数倍大きいDVDは7500ウォンで販売されている。料理、娯楽関連のCDだけでなく、マラドーナやベッケンバウアーなどの世界の有名サッカー選手の一代記のCDまで販売されている。
世界の名作アニメも広がっている。「シンデレラ」、「ピノキオ」、「眠れる森の美女」、「美女と野獣」、「ロビンフット」などは、どこでも見ることができる。特に、米ハリウッドの代表アニメである「トムとジェリー」も、「ねずみと妖術世界」というタイトルで人気を呼んでいる。密かにビデオ店を運営する個人も増えている。国家が製作したCDは、1日北朝鮮ウォンで300ウォン、不法CDは500ウォンでレンタルすることができる。
北朝鮮で上映される外国作品の多くが中国の作品であり、北朝鮮住民が中国に思想・文化的に同化されている現象は憂慮されるほど大きな問題だ。実例として、万寿台テレビでは、中国ドラマが固定で放映されている。現在、中国ドラマの「無名英雄」が、その前には中国の空挺部隊を描いた「垂直打撃」が放映された。
しかし、韓国の映像物に対する処罰は強化されている。過去には、韓国ドラマを見たことが見つかっても賄賂で逃れることができたが、今は麻薬犯人より厳しく処罰される。中央テレビが、7月29日に放映した10分間の韓国誹謗番組「危機の南朝鮮、惨めな民生」も、韓国に対する北朝鮮住民の幻想を破るために製作されたものとみえる。
金正日(キム・ジョンイル)総書記が先月半ばに観覧した演劇「ネオンの下の哨兵」は、北朝鮮指導部の内心を表わしている。この演劇は、1940年代末、解放直後の上海を舞台にした中国の演劇を脚色したものだ。ネオンは明滅する資本主義の物神主義を象徴している。北朝鮮当局は、「ブルジョア思想の中毒になれば、革命を守ることができない。資本主義思想の文化的浸透を防がなければならない」という内容が盛り込まれた同演劇の観覧を軍人に義務づけている。
zsh75@donga.com