鬱陵島(ウルルンド)の海には、アワビやホヤのほかにも、「海洋深層水」という独特の特産物が出る。海洋深層水は、水深200メートル下の深海を流れる海水で、温度が低く比重が高いので、浅い海水と混ざらないきれいな水資源だ。
鬱陵島には、この海洋深層水を利用して、ミネラルウォーターや化粧品、食品材料を作るパナブルという会社がある。企業がほとんど進出していない人里離れた島に進出した同社の親会社は、食品会社ではなく液化石油ガス(LPG)会社のSKガスだ。
●水が目につかない水工場
15日に訪れたパナブル「水工場」では、水が入った完成したミネラルウォーターのボトルを除いて、生の水を見ることが難しい。汚染を防ぐために、海洋深層水を空気と完全に遮断して、オートメーション工程でミネラルウォーターを作るためだ。パナブルが作るミネラルウォーターは、海洋深層水をパイプで引き上げ、塩分だけを除去し、ミネラルと栄養分を残す。この過程は、特殊設計された大型タンク内で行なわれるため、目に見えない。海水から淡水に変わった海洋深層水は、ヘパフィルターという微細なほこりを除去するフィルターで空気を管理する「クリーン・ルーム」でミネラルウォーターのボトルに入れられるが、これもオートメーションで行なわれる。このため、1日約9万ボトルのミネラルウォーターを生産するこの海洋深層水工場の職員は、工場長や事務職職員を入れても26人にすぎない。
今月初めから、水深1500メートルの海洋深層水を利用して、ミネラルウォーターと豆腐のにがりも生産を始めた。これほどの深さの海洋深層水を利用する会社は、パナブルが初めて。深いほど汚染があまりなく栄養が豊富だが、水を汲み出すコストがかかるため、簡単に乗り出せないためだ。
ユ・ソクピル工場長は、「鬱陵島は、東海(トンヘ、日本海)の真ん中に位置し、海岸から6キロメートルだけ離れても水深が1500メートルに達し、海洋深層水の開発に最適の環境だ」と話した。
●ガス会社がミネラルウォーターを作る理由は
SKガスは、パナブルの前身の「鬱陵ミネラル」を昨年買収した。ガス会社によるミネラルウォーター会社の買収を不思議に思う人も多かった。しかし、SKガスの考えは違った。LPGは生産される地域が少ないため、使用される分野も制限的だ。これは、LPG事業に力を入れているSKガスの成長の可能性も制限的であることを意味した。
そのため同社は、環境にやさしい事業を新たな成長動力と考えた。清浄エネルギー事業のLPG事業と関連があると判断したためだ。同社は、環境にやさしい事業の中でも、水やゴミ処理関連事業に力を入れる予定だ。LPG事業に必要な精製技術と大規模装備の運用能力が、上下水道事業やゴミ再処理事業にも求められるためだ。
パナブルはこのような戦略にぴったりだった。同社の核心技術である浸透処理技術は、海水を飲料水にするために塩だけを濾過してミネラルと栄養素を残す技術だった。SKガスの李テヒ企画チーム長は、「パナブルの淡水処理技術は、下水処理やゴミ処理の技術にも応用が可能だ。企業クライアントだけを相手にしてきた我が社が、パナブルの買収により、消費者も対象にしてクライアントの範囲を広げることができるのもチャンスだ」と話した。
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