コリン・パウエル元米国務長官は在任時代、韓国の外交通商部長官と会った後、「再びあの人とは会いたくない」と腹を立てた。韓国の長官が最後までずっと、用意してきたメモを読み上げたため、まともな話し合いができなかったのである。問題の長官は40年以上外交官を務め、英語による会話が不可能な人ではなかった。自分の意思をはっきり伝えるために発言内容を、書面で準備したまでだと反論したものの、今も外交街では、英語の実力不足によって起きた「代表的な出来事」と語られている。
◆外交部が今年上半期に4級以上の外交官56人を対象に行った英語での会話試験(TOP)や作文試験(TWP)で、10人が5等級、1人が等級外の判定を受けた。試験対象者の19.6%が、「外交業務を無難にやりこなせる程度」である4等級に及ばなかった。5級以下の外交官を対象に行った英語試験(TEPS)においては、受験者の80人中45%の36人が、5等級や等級外の成績をつけられた。外交部はほかの組織に比べ、高い基準を適用し、TEPSの場合、4等級を800〜899点と決めている。とはいえ、外交官らの多くが英語試験で落第点をつけられたことは、残念でならない。外交官にとって外国語は、戦争に出向く軍人の銃のようのものだ。企業をはじめ、社会の各部門では外国語専門家がありふれているのに、外交官が外国語、特に世界の公用語であるほかならぬ英語をきちんと駆使できなければ、それは国の競争力にかかわる問題だ。第2外国語の場合は、さらに深刻だ。在中韓国大使館の外交官のうち、仕事を遂行できるほどの中国語の実力所有者は、5分の1にも満たない。中国はとりわけ関係を重視する国なのに、韓国大使館は、個人的なネットワークの構築ができるほどの中国語の実力を備えていない。
◆潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は英語がうまい。にもかかわらず、米国人らは彼の英語は気に入らないようだ。米国の地上派放送が、いままで潘総長に対してインタビューを行わないのは、彼の英語が窮屈に聞こえるからだという話も聞かれる。それだけ、完璧に外国語を駆使するのは難しい。外国語に堪能な外交官はそれゆえ、さらに一際目を引く。キャサリン・スティーブンス在韓米大使が韓国語を話せなかったら、韓国の国民や政府は、これだけの好意を持てなかっただろう。
方炯南(バン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com