#1〓6歳の娘を持つチョ某さん(47、女)は、先月18日の出来事を思うだけでも、ぞっとしてしまう。地下鉄1号線の東仁川(トンインチョン)でしばらく知り合いと会話をしていたところ、一緒にいたはずの娘がいなくなった。6時間後に見つかった娘は、「お菓子を買ってあげる」というホームレスの金某氏(49)に連れて行かれたことが分かった。逮捕された金容疑者は、「自分で育てるつもりだった」と言い訳をした(略取・誘拐)。
#2〓 京畿道光明市(キョンギド・グァンミョンシ)のある里山で行方不明になったカラオケ店の風俗女、シン某さん(19)の遺体が発見された。犯人はソウル衿川区(クムチョング)の区役所で働いている公益勤務要員のチャン某容疑者(26)。チャン容疑者は11日、シン氏が働くカラオケ店で遊んだ後、持ち合わせのお金のないことに気づき、「自宅まで行けば、1時間当たり3万ウォンと計算して支払う」と、シン氏を誘引し、里山に連れて行った後殺害したことが分かった(略取・誘拐および殺人)。
最近、「ナヨンイ事件」など、未成年者や婦女者を対象にした凶悪事件が波紋を投げている中、この2年間で、人を誘い出したり、無理やり連れ去って監禁する犯罪が急増していることが分かった。与党ハンナラ党の鄭甲潤(チョン・ガプユン)議員室が警察庁から提出してもらった国政監査資料によると、05年にわずか146件だった略取・誘拐犯罪件数は、08年は262件、09年7月までは320件へと大幅に増加した。今年に入ってから7月までに集計された件数は、05年の1年間発生した全体件数の2.2倍に上るほど、急増している。同期間(05〜08年)、5大犯罪である殺人や強盗、強姦、窃盗、暴力犯罪は高くても1.2倍増加したか、かえって減った。
検挙件数も大幅に増えた。略取・誘拐の容疑での逮捕件数は05年には136件に過ぎなかったが、今年は7月まで315件に上る。検挙率も、08年は発生事件の77.5%(203件)だったが、今年は98.4%(315件)と大幅に増加した。
それには08年の「へジン・イェスリ事件」以後高まった国民的な関心が少なからぬ影響を及ぼした。警察の関係者は、「行方不明や誘拐への関心が高まり、かつてなら、届け出なかったはずの出来事を届け出る人々が増えた」とし、「別居中の夫に通知無しで子供を連れて行ったのに、妻が先立って怯え、略取・誘拐と届け出る例がたびたびあるほどだ」と話した。
この2年間の厳しい経済状況も影響を及ぼしたという分析が出ている。東国(トングク)大学・警察行政学科の郭大瓊(クァク・デギョン)教授は、「略取・誘拐の犯罪など、直接人を相手に行う犯罪は、主に窮地に追い込まれた人が起こす犯罪だ」とし、「08年以後の金融危機により、経済全体が厳しくなり、営利目的の略取・誘拐が増えたようだ」と語った。
専門家らは、略取・誘拐犯罪の場合、加害者とは何の恨みもない罪のない弱者が被害を受け、ほとんどの場合、誘拐や殺人のような凶悪犯罪が続いているのが問題だと指摘している。郭教授は、「同じ種類の犯罪より、さらに重い処罰が必要だ」と付け加えた。
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