黄禹錫(ファン・ウソク)氏(元ソウル大学獣医学部教授)は06年、ソウル大学から解任された後、同年7月、自分を慕った約20人の研究員とスアム生命工学研究院を設立した。ソウル九老洞(クロドン)のある建物に研究室を設け、研究を進めたものの、住民抗議が殺到し、廃業に追い込まれるなど、最初はなかなか定着できなかった。その後、パク・ビョンス・スアム研究財団理事長ら知人らの助けを受け、京畿道龍仁市(キョンギド・ヨンインシ)の現在の場所に移してから、事実上、外部との接触を持たないまま、研究ばかりに専念してきた。
研究グループは、論文捏造事態後、事実上中断されたヒト体細胞クローン研究の代わりに、クローン動物へ目を転じた。07年、米生命工学企業のバイオアーツ社の依頼を受け、米オリオングループ会長のジョン・スパーリング氏の愛犬「ミーシー」の複製に成功したことに続き、中国の希少種である「チベタン・マスティフ犬」、9・11テロで活躍したシェパード救助犬の「トレーカ」の複製に相次いで成功し、再び注目を受け始めた。さらに、医療用たんぱく質の生産用クローン牛と臓器移植用ミニクローン豚の研究にも尽力した。これまで、黄博士の研究室で生まれたクローン動物だけでも、合わせて121匹。海外への論文投稿が事実上不可能になった状況でも、国際科学論文引用索引(SCI)に登録された学術誌に15本の論文を載せた。
勿論、その渦中にも危機は続いた。昨年7月、保健福祉家族部は、スアム研究院が提出した体細胞複製研究承認申込書を「研究責任者の資格に倫理的な欠格事由がある」とし、拒否した。政府は今年4月、チャ病院に対して、ヒト体細胞クローンES細胞の研究計画を承認したが、黄博士チームに対しては、研究許可を出していない。弟子の李柄千(イ・ビョンチョン)ソウル大学獣医学教授と特許紛争に巻き込まれたこともあった。昨年9月、バイオベンチャーのアールエヌエルバイオは、韓国内初のクローン犬「スナッピー」の特許権所有者であるソウル大学から得た専用実施権をスアム研究院が侵害したと主張し、訴訟が始まった。しかし、1審の訴訟は、独自の技術を認められたスアム側の勝訴で一段落した。
3年5ヵ月間の裁判で、黄博士の研究を後援する支持層は、かえって拡大した。今年8月には、京畿道(キョンギド)が、自治体として初めて刑事訴訟が進められているスアム研究院と糖尿病治療と新薬の開発などのため、形質転換クローン豚の生産に関する協約を結んだ。今回の判決で黄博士側は、しばらくクローン動物の研究と海外研究活動に尽力しながら、控訴を準備するものとみられる。
先日、黄博士と会ったという科学技術界のある関係者は、「黄博士が控訴と最高裁に対する上告まで考慮し、最低3年以上の長期戦を念頭に置いているようだった」とし、「最高裁の判決が出る前まで、明らかな研究成果を残すという考えらしい」と伝えた。
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