数年前、有名なバラエティー番組に出演したお笑い芸人たちが、所属のマネジメント会社との間で不公正な裏契約を交わしたと、集団で暴露した。契約期間が10〜15年にのぼり、契約金はほとんど皆無だったが、「断れば、テレビ番組への出演をさせない」という脅しに、やむを得ず印を押さざるを得なかったと主張した。舞台の上では笑い、後ろでは泣く芸能界の影が明るみに出たのだ。忘れたころに暴露される芸能スターたちの裏契約は、甲と乙とがはっきりしている不平等な不法契約だ。タレントのチャン・ジャヨン氏を自殺に追い込んだのも、裏契約と無縁ではない。
◆人道的な面から推進されるべき南北間の交流協力事業にも裏契約が登場する。金大中(キム・デジュン)政権は00年、初の南北首脳会談を推進し、会談の見返りとして5億ドルを北朝鮮に支払うという裏の契約を交わし、実際にお金を送金した。07年、南北が離散家族の映像レターの交換事業に合意した際も、北朝鮮が作る映像レター1本あたり1000ドルを払う裏契約が交わされた。一方的な提供ではなく、堂々たる内容だったなら、公開できないわけがないだろう。最近の南北首脳会談推進説に絡んで、大統領府は「裏契約などない」と釈明した。
◆公企業の労使の間で交わされる裏契約は、持ちつ持たれつの内容で、なかなか明るみに出ない。多くの公企業の天下りの経営者らは、就任に反対する労組に対して、賃上げや賞与のような就任へのプレゼントを約束する裏契約を交わすことが、慣例となっている。変則的に引き上げた賃金は、そのまま国民の負担となる。今年の予算から27兆3000億ウォンが公企業に対して支援される。このうちの多くは、公企業の人件費として使われる。政府は公企業の改革を数回に渡って強調したものの、裏契約を摘発し、無効にした事例はまだない。
◆給料も多く、福祉も優れていて、「神から授かった職場」といわれる金融公企業の労組が、会社側に裏契約を要求した。預金保護公社の労組は、当面の賃金の5%引き下げの代わり、現政権の任期が終われば、15%の引き上げを行う内容の裏契約書に、公証まで受けるように主張した。政府による金融公企業の賃金カットの政策に協力するかのように見せかけ、高い評価をもらえばボーナスまで手に入る。会社側が応じず、話は流れたが、これは公企業の労使による国民税金の略奪に他ならない。ほかの公企業ではこのような裏契約がないか、気をつけなければならない。
朴永均(バク・ヨンギュン)論説委員 parkyk@donga.com