26日、客席に人がいない文鶴(ムンハク)球場で会ったプロ野球SKの金星根(キム・ソングン)監督の顔は平穏に見えた。ただそれは、野球の話が出る前までだった。
——韓国シリーズ第7戦は後々まで悔いが残りそうだが。
「KIAが優勝して良かったと思う。他のチームやファン、マスコミがSKをもっと憎まずに済むだろうから。韓国シリーズ3連覇を果たせなかったのは残念だが、うちの選手らが人間の能力以上を仕事をしてくれたので、誇らしく思う。終盤の19連勝にプレーオフの逆転勝ち、韓国シリーズの最終7戦まで。これはSKだからこそ発揮できる能力だ。世間に『諦める』という言葉がないということを見せ付けた一年だっと思う」
——他のチームは、SKの野球が憎らしいと言っているが…。
「自分にできないことを人がやれば憎らしく見えるものだ。世界のどの球団も我々のように練習するチームはない。ポストシーズンで選手らは注射を打ってもらいながら試合に出た。努力すればするほど、勝利への執念も強くなる。努力したことのない人の目にはこのような部分が憎たらしく感じられるかも知れない」
——SKの野球に感動を受けたというファンも多いが、おもしろくない野球をすると白い目で見る人の方がもっと多いようだ。
「金妍兒(キム・ヨンア)の話を引き合いに出してみよう。あの選手は、骨身を削る努力でミスを減らし、だんだん腕が上達している。そのような姿勢が真のプロだ。野球も一緒だ。私にとって野球は遊びではなく、死に物狂いの戦いだ。今年、SKの防御率は8球団の中で1位だ。投手が良かったから?全然違う。私は負ける試合でも諦めたことがないからだ。5−0でリードしている9回裏に投手を替えると、ファンに非難される。しかし、人生のように、野球も一歩先どうなるか分からないものだ。逆に、大きくリードされているからといって試合を諦めるなら、その試合を見に来たファンに申し訳ないことだ。どのような状況でも諦めなければこそ、強いチームになれる。負けても相手側に愛想をつかされる負け方でなければならない。このような努力を憎たらしいと言うのは、アマチュアのやることだ」
——SKの選手たちは、このようなチームでプレーすることが幸せだと言っていた。
「チームワークは、チームの雰囲気が良いこととは違う。真のチームワークは、同じ目標に向かって一緒に突き進むことだ。07年と08年に優勝した時、金圓衡(キム・ウォンヒョン)は、韓国シリーズのエントリーに名前を入れたが、1試合も出られなかった。しかし、全く気にすることなく、チームのために献身した。今年は主将の金宰鍱(キム・ジェヒョン)がよくやってくれた」
——選手たちがこれほどまでに一丸になるのは簡単なことではなさそうだが…。
「朴栽弘(パク・ジェホン)は、自尊心の強い選手だ。私が就任した後、1軍と2軍を行き来させたので、気分が悪かっただろう。ある日、バントを指示したけど失敗した。その次もまたその次も失敗した。その後、ある日、朴栽弘が私のところに来て、『自分のせいで負けました』と言った。その時、『負けたのはいい。私はお前が来てくれたのが嬉しい』と言った。そしたら、私の胸に抱かれてずいぶん泣き続けた。その時から心を開いたようだ」
——SKは本当に恐ろしいほど練習を重ねるチームだ。どういうチームにしたいのか。
「投手は無理に練習させない。打者は正常なやり方で練習すれば、いくら長時間練習しても怪我しない。野球は過程での戦いだ。ぶつかってみないと、発展がない。10個のうち3個打てれば上手いというのが野球だ。しかし、残りの7個に対しては反省をしなければならない。そのような過程を経験すれば、同じく3本の安打を打っても内容が変わる。私はSKをメンバーの良いチームではなく、強いチームに作りあげたい」
——エースの金広鉉(キム・グァンヒョン)と主力捕手の朴勍完(パク・ギョンワン)が復帰すれば、来年は圧倒的な戦力になるだろうという見方が多い。
「私はいつも最悪の状況を想定して絵を描く。捕手出身の監督に多く見られる考え方だ。私は投手出身だけどそのような考え方を持っている。金広鉉が自分のペースを取り戻せないかも知れないし、全炳斗(チョン・ビョンドゥ)が投げられなくなるかも知れない。いつも備えをしておかなければならない。今年、SKが数々の危機を乗り越えることができたのも、状況への対処が早かったからだ。特に、球団がルーカス・グローバーや門倉健ら、代替の助っ人を早く見つけてくれた」
——何も憚らずにたくさんの意見を発して、議論を起したりした。球団との不和説も聞こえるが。
「金応龍(キム・ウンヨン)三星(サムスン)社長が現場にいたら、私がそんなに騒ぐこともなかった。私もバカではないから、どのような反響があるかは知っている。球団と傷つけられるファンには申し訳ない部分だ。しかし、間違っていることを間違っているときちんと言わなければ、正義が無くなる。球団が私にどのような不満を持っているかは知らない。私という人間は、放っておけば自分で何とかできる。しかし、監督の特殊性を無視したり、部下の社員扱いをすると、ケンカになる。練習をたくさんしてお金をたくさん使うことに不満があるかも知れない。しかし、SKは数十億ウォンもかかる自由契約選手を獲得したこともない」
——野球以外の楽しみはあるのか。
「私は野球の楽しみだけで生きている人だ。ゴルフもやってみたが、おもしろくなかった。野球は一見簡単そうでも、奥へ入れば入るほど、限りない魅力がある。ひどいときは酒を飲んでいる時にも頭の中には野球のことでいっぱいだ。人生で一番幸せな人は、何か一つにはまっている人だ。そういう面では、私はものすごく幸せな人間だ」
——特に、慕ってくる人が多い理由は何だと思うのか。
「KIAの鉠汎鉉(チョ・ボムヒョン)監督も、優勝した後、『ありがとうございます』と言ってきた。鉠監督は息子だ。身内は家族同士だからお互いに気持ちが分かる。重要なのはよその家族だ。よその子が1人挫折すると、その後ろにいる何人もの人が一緒に挫折してしまう。実際、私はキャンプ・トレーニングへ行ったあと、3月に1日だけソウル聖水洞(ソンスドン)に自宅に帰った。たまに家へ帰ると、『またずいぶん変わったなぁ』という気がして居心地が良くない。まるで他人の家に来ているようで…。(笑)」
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