「60代以上70代は投票しなくても良い」。鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員の受難は2004年のこの発言から始まったと言っても過言でない。総選挙を控えた4月1日、当時のヨルリン・ウリ党の議長だった鄭氏の「年寄りを貶す発言」で民心は沸騰した。急激な下降カーブを描いた党の支持率は、鄭氏が共同選挙対策委員長と全国比例代表候補を辞退した後も回復できなかった。
◆「証拠も、証人もいなく、陳述の一貫性や信憑性もない状況下で、70歳の年寄り(元大韓通運社長のクァク・ヨンウク被告を指す)の主張だけに頼って起訴した起訴状」。検察がクァク被告から5万ドルを受け取った容疑で韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相を在宅起訴すると、韓氏側が出した論評だ。70歳の年寄りの主張は信用できないという考え方が伺え、またも年寄り無視発言が波紋を呼びそうだ。カネを受け取ったたどうかは法廷で究明されるだろうけど、どうしてあんな70歳の年寄りに重要な公企業の社長を任せたのか。
◆日ごろ、韓氏の収賄疑惑問題には大して関心がなかったというソギョン大学の金ヒョソン碩座教授(68)は、「70歳の年寄りがどうだと言うんだ?」と悲しさを越え、怒りを感じるという。加齢とともに体力は衰えるかもしれない。人によっては健康状態も異なり、80歳代、90歳代になっても洞察力と判断力はもちろんのこと、記憶力もまったく衰えない人だって少なくない。平均寿命が延びて高齢化社会が進むにつれて、世界的にも、年取った人たちが政治、経済、社会を支配するジェロントクラシー(gerontocracy)時代だ。
◆クァク被告とその日同席した姜★★(カン・ドンソク)2012年麗水(ヨス)世界博覧会組織委員長(71)も似たような年配だ。故金大中(キム・デジュン)元大統領は今年で85歳となり、死去までに休まむことなく活動した。「韓明淑政治工作粉砕共同対策委員会」の論評通りなら、一貫性も信憑性もない老人に国が振り回されたという解釈も可能になるところだ。韓氏も1944年生まれだから、5年後には70歳代になるというのに、そんな乱暴な言い方をしてはならない。法理と証拠をもってし烈に有無罪を争うことがあっても、年取った世代に対する冒涜は避けるべきだ。
金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuriW@donga.com