ここで若者が夢を育てることができるだろうか。エルサルバドル中米技術学院(ITCA)中央キャンパス内に移動した。ITCAは、エルサルバドルの国家発展に必要な技術関連人材を輩出するために設立された政府の外郭産学協同教育機関だ。毎年8万人の卒業生を輩出する。
ITCA内の先端技術教育センターのメカトロニクス講義室。学生のルイス・プエンテス氏(22)とサビエル・バースケス氏(18)が、ベルトコンベアーシステムを縮小したシミュレーション装備の作動手順の設計に余念がない。設計を終えた後、装備が作動すると、モーターの連結や電流の流れが一目で分かる。これらの装備は、実際の自動化システムと同じで、プログラミングによってどのような作動結果になるか、学生がトレーニングできるよう特別に製作されている。
ITCAの核心教育過程である先端技術教育センターは、韓国国際協力団(KOICA)が07〜09年に、生産自動化実習装置と先端ネットワーク装備(80万ドル)を無償支援して設立された。エルサルバドルで、このような装備を整えているのはITCAが唯一。
ITCAに入学する前、別の工科大学を卒業したというプエンテス氏は、「機械工学を学んだが、実習を一度も受けることができず、産業現場で何の役にも立たなかった」と語った。バースケス氏は、「私が何をミスしたのか分からない旧式の装備とは違って、韓国の最先端装備は、設計による作動過程を実感しながら演習できる」と話した。
感心なのは、彼らの抱負だった。ただ一流企業に就職するだけではなかった。プエンテス氏は、「企業から命じられた仕事だけをするつもりはない。韓国の進んだ技術を活用して、エルサルバドルの企業環境を改善し、国家経済の発展に貢献したい」と語った。エフライン・ヒメネス氏(21)は、「私たちが学んだ技術は、数年後にはエルサルバドルの核心競争力になるだろう」と強調した。
ダニエル・コーエンITCA理事長は、「企業に革新を提案する専門家に学生を成長させる。彼らは、エルサルバドル技術経済の中枢になる製造業と情報技術(IT)分野の先駆者として活躍するだろう」と抱負を語った。
70年代、中米最大の新興工業国に浮上したが、長い間の内戦のため低開発国家に転落したエルサルバドル。若者の剥奪感が深刻だという。しかし、ITCAの学生には、治安の不安やマイナス経済成長(09年経済成長率−3.3%)の喪失感は見られなかった。
学生たちは、韓国が支援した先端装備で、エルサルバドルの再跳躍を夢見ていた。その意欲は、「漢江(ハンガン)の奇跡」を可能にした70、80年代の韓国の産業の担い手を思い出させる。実際、カルロス・オロスコ学長も、「韓国を発展モデルとした」と話す。金ウンソプ・エルサルバドルKOICA事務所長は、「エルサルバドルの人々は、韓国人のように勤勉で積極的なので、インフラだけ提供すれば、韓国式経済奇跡が十分に可能だ」と伝えた。
KOICAの無償支援は、ITCAを越え、エルサルバドルの全国の公立学校の学生に、ITの未来の夢を育てている。
「どの部分が問題ですか」
翌日、ITCA中央キャンパス内コンピュータ遠隔修理センター。電話のベルが鳴りやまず、ヘッドフォンをつけたITCAの卒業生らが、遠隔制御システムに接続して、公立学校のコンピュータを修理していた。修理センターは、KOICAが装備を無償支援(70万ドル)し、08年に設立された。現在、エルサルバドルの公立学校5000校のうち720校(学生数50万人)がサービスを受けている。今年、対象学校を1200校まで増やす計画だ。エメリナ・チャコン教授は、「遠隔制御システムは、地域のコンピュータの専門家が不足したエルサルバドルで、革命同様の助けとなる」と語った。
また、ここにはKOICAが無償支援(268万ドル)したコンピュータのリサイクルセンターが4月に完工する。古いコンピュータを新しいコンピュータに誕生させ、全国の学校に支援する計画だ。リサイクルサービスは、KOICAが支援した装備を活用して、すでに昨年8月から行われている。コンピュータ1000台が新しく生まれ変わった。フリニ・サルダーニャ副総長は、「エルサルバドルに対してドイツや日本が活発な無償援助活動を行っているが、IT分野は韓国だけが支援している」と強調した。
彼らは、運営のノウハウまで誠意をもって伝授した韓国に感謝した。リカルド・カドロン教授は、「韓国訪問研修を通じて、エルサルバドルで接することができない新しい教育方式を学んだ点が勉強になった。それがなければ装備が無用の長物になっただろう」と話した。
学生のレネ・ブルノ氏(26)は、「韓国を『経済だけ発展した国』だと思っていた。先端装備と先進技術を心から共有しようとする姿を見て、『考えのある国』だと改めて感じた」と話した。韓国は、エルサルバドルでは「経済復興のサルバドール(スペイン語で「救世主」の意味)」と考えられていた。
「アミゴス・デ・コレア(Amigos de Corea=韓国の友人)」
05年、エルサルバドル政府と教育機関の関係者が結成した団体の名前だ。会員数は125人。単なる親睦会ではない。貧しい小学生を助け、荒廃した森に木を植える。韓国国際協力団(KOICA)の韓国研修プログラムを終えた人々が、韓国への感謝を忘れないために作った会だ。
今年の活動計画を立てるために、首都サンサルバドルのあるカフェに「韓国の友人」の運営スタッフが集まった。会長のミルトン・マガニャ外交部アジア局長は、「韓国の文化に触れるだけでなく、『助ける国』韓国のように、母国に貢献する方法を模索する会を結成した」と紹介した。
彼らは、毎年一回、「小さな韓国映画祭」、「韓国料理学習」などの文化イベントを行う。昨年8月に開かれた「韓国料理学習」は、エルサルバドル在住の韓国人が経営する韓国レストランで、キムチチゲやピビンパ、のりまきを作った。9月に開かれた「小さな韓国映画祭」では、コメディ映画『家門の栄光』を鑑賞した。
07年に映画『JSA』を見てからは、韓国の暗い部分である分断問題にも関心を持つようになった。映画を見た後、「南北統一に貢献する」という声明を作成し、KOICAに伝えた。エルサルバドル内の韓国系企業を訪問するなど、韓国人との交流も広げている。
韓国から受けた支援を忘れず、その精神をエルサルバドル社会に伝えることもしている。彼らは昨年、エルサルバドルのソヤパンゴ市にある「大韓民国小学校」の貧しい生徒1人を選定して、「韓国の友人」という名の奨学金を与えた。学校の図書館に本も寄贈した。大韓民国小学校は、KOICAが07〜08年に施設の改善を支援した学校だ。
会員であるネストド・クララITCA教授は、「単発でなく、その生徒が望む製菓・製パン課程を終えるまで見守る」と語った。今年は、奨学金の対象者を3人に増やし、将来ITCAで学べるようにする計画だ。マガニャ局長は、「いつかこの会を財団とする学校を設立する」と話した。
「ITCAの学生たちも、韓国に行って先進技術を学んできてほしい。最近、ITCAが工科大学に昇格したので、交換教授プログラムなどの大学間の交流も可能だろう」
エルシ・サントドミンゴITCA総長は、「韓国の大学に、私たちの切実な望みを分かってもらいたい」として、このように話した。ITCAの教職員21人が、韓国国際協力団(KOICA)の支援で韓国研修を受けた感銘を、学生にも経験させたいという話だった。
サントドミンゴ総長は、「エルサルバドルの科学技術を担う若い人材が最高の環境で教育を受けられるようにしてくれたことは、値段をつけることはできない」として、繰り返し感謝を述べた。彼をはじめとするITCAの教職員はみな、韓国からきた客にKOICAから支援を受けたものを一つでも多く見せようとした。
サントドミンゴ総長は、「韓国は、冷蔵庫などの廃家電製品をリサイクルして商業化するアイディアが優れていると聞いた。環境分野の技術も学びたい。韓国の学生の社会奉仕活動にも深い印象を受けた」と話した。