6・2地方選挙を控え、学校の無償給食問題が主要イシューに浮上している。京畿道(キョンギド)知事への出馬意思を表明した野党の何人かの候補が、無償給食に予算を支援するという公約を掲げたことに続き、ソウル市長出馬を準備中の与党のある候補までも小学校無償給食計画を発表した。生徒らに無料で昼食を与えるというのに反対する父兄はいないはずだから、このまま行けば、全国の全ての市道の団体長や教育監候補らが先を争って無償給食の公約を掲げることになるかも知れない。
無償給食の議論を触発させた当事者は、昨年、全国教職員労働組合の支援で当選した金相坤(キム・サンゴン)京畿道教育監だ。同氏は自分の公約の実現に向け、昨年末、道内の小学校5〜6年生の全員に無償給食を与える予算案を京畿道議会に提出したが、否決されると、今度は今月2日、14年をめどに段階的に全ての小中学校で無償給食を実施する計画を打ち出した。議会で成立できないことを承知の上で、再選出馬のための宣伝効果を狙ったのだ。
京畿道の小中学生138万9000人余りに無償給食を行うには6612億ウォンが必要とされる。ソウルの場合、小学生だけでも約59万8000人に2587億ウォン、中学生まで含めると約95万4000人に4318億ウォンが必要だ。給食施設費のような数千億ウォンの付帯経費は別途だ。京畿道教育庁(8兆2000億ウォン)とソウル市教育庁(6兆3000億ウォン)の全体予算の中で70〜80%が教師人件費など、硬直性経費として支出されているため、残りの事業費のほとんどを無償給食に充てなければならないのだ。他の教育事業に支障が生じるのは目に見えている。たとえ、市や道から一部の予算を支援してもらうとしても、緊要なところに使われるべき金を持ってくることになるのは同じだ。
選挙出馬者らは有権者にとっておいしい公約をやたらに乱発するが、突っ込んで考えてみると、結局、負担は有権者に降りかかる。月5〜6万ウォンの給食費の節約は、今すぐは嬉しいかも知れないが、そのため、さらに良い教育の機会を逃すことになるかも知れない。経済的に余裕のある生徒にまで無償給食を実施するよりは、余裕のないさらに多くの生徒に良質の教育的恩恵が届くようにするのが、正義と公平の考え方にも合致する。長期的に見れば、韓国社会の両極化を解消する上でも役立つことだ。
今回の地方選挙でも人気迎合的なポピュリズムの公約が後を絶たない余地が十分ある。我々は国の資源配分の歪曲や国論分裂を招いている世宗(セジョン)市問題だけでも、ポピュリズム公約の弊害を飽きるほど経験している。国民を騙し、国に害をもたらす公約を乱発する出馬者は有権者が見分けなければならない。賢明な有権者こそ先進国家を作ることができる。