#1〓04年3月、日本陸上短距離の父・宮川千秋東海大学教授が韓国へ来て、有望株を指導していた時の出来事。300メートル全力疾走20回を命じられると、選手らはビックリした。長くて200メートルを走っていた選手らにとって300メートルは大変長い距離で、1人もきちんとこなすことができなかった。
#2〓09年2月22日、ジャマイカ・キングストン国立競技場。100、200メートル走で世界記録を保有している北京五輪3冠のウサイン・ボルトは、400メートルに出場して45秒54で優勝した。ボルトは、「400メートルは体作りのためにトレーニングする」と話した。
ボルトは14日、ジャマイカ・キングストン国立競技場で開催され国内大会で再び400メートル走に出場する。昨年9月、国際陸上競技連盟(IAAF)ワールドアスレチックファイナル以降5ヵ月ぶりの出場を、メイン種目ではなく400メートルに決めた。07年に立てた45秒28が自己ベスト記録。世界記録(43秒18)には大きく及ばないが、それでも400メートルに出場する理由は、100メートルと200メートルでさらに良い記録を出すためだ。
体育科学研究院のソン・ボンジュ博士(運動生理学)は、「トレーニング方法論に過負荷の原理というものがある。300メートルと400メートルを全力疾走で消化できたら、100メートルと200メートルはもっと軽く走れる」と話した。宮川教授も「200メートルを消化するためには、300メートル以上を全力疾走する能力があってこそ記録を出すことができる」と指摘した。
昨年、ベルリン世界選手権200メートルでの決勝で、19秒19という驚くべき世界記録を立てた時のボルトの姿を見れば理解できる。ボルトは200メートルの決勝線を駆け抜けてからもさらに数十メートルを走りながらセレモニーを披露した。一方、他の選手らはゴール付近で座り込んでしまう選手もいた。ボルトはもう一度200メートルを走ってもかまわないほど生気に満ちているように見えた。ボルトは100メートルでも9秒58の世界記録を樹立した。
短距離で400メートルのトレーニングが必要な理由は、「短距離の伝説」マイケル・ジョンソン(米国)も見せてくれた。400メートルがメインだったが、1996年のアトランタ五輪200メートルで19秒32という驚異的な世界記録を立てた。この記録は、北京五輪で19秒30を記録したボルトによって12年ぶりに塗り替えられた。それほど短距離で「長距離」トレーニングは重要だ。
ボルトが世界で一番速い男になった背景には芝生トラック練習もある。代表クラスの選手が練習するジャマイカ工科大学上級者練習所(HPTC)のトラックは芝生になっている。ボルトは普段この芝生のトラックで練習し、大会に出場する頃になると、陸上専用トラックで練習する。短距離代表チームと一緒に合宿練習でジャマイカに行ってきたソ・マルグ元監督は、「芝生は表面が不規則なため、脚の小さい筋肉を鍛える効果がある。また、地面が柔らかくて同じトレーニングでももっときついため、効果はさらに大きい」と話した。
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