1773年12月16日、米ボストンの港に停泊していた東インド会社所属の船舶3隻に、モホークインディアンの服装をした人たちが押し寄せた。彼らは3時間に渡り、船上に積み上げてあった茶箱342個を海に投げ捨てた。米独立戦争のきっかけとなったボストン茶会事件である。この時、茶を投げ捨てた人々の大半は、茶の密輸業者だった。同年、英国で制定された茶条例(Tea Act)により、東インド会社が供給する茶の価格が暴落し、打撃を受けると、報復に乗り出したのである。
◆この事件後、ボストンではそれまで、税金を過度に取り立てた英政府への租税抵抗運動が展開された。運動の中心には、「ボストン茶会事件」という団体があった。この名称から由来したティーパーティー運動が最近、米国で活発に再現されている。11万人が参加するティーパーティーのモットーは、「少ない税金、小さな政府」だ。英国による重課税を拒否した米国の国父らの精神と繋がっている。彼らは、バラク・オバマ米大統領が主導する人為的景気刺激策に対しても批判している。ティーパーティーとはいえ、本当に茶を飲む会ではなく、活動スペースは主にツイッターやフェイスブックなどオンライン上のコミュニティーだ。
◆ティーパーティーの対抗勢力として、コーヒーパーティーも生まれている。韓国系のアナベル・パク(41)が主導するこの会は、「大きな政府」を支持している。12万人が参加しているコーヒーパーティーは、スターバックスを始め、370のコーヒーハウスで、オフライン会合まで開いている。1780年代のフランスのコーヒーハウス(カフェ)を思わせる。これらのカフェは、さまざまな情報やアイデアがやり取りされる啓蒙主義の産室とし、フランス革命のエンジンを提供した。フランス歴史家ジュール・ミシュレは、「毎日、カフェに集まった人々は、自分らが飲んでいた黒い飲料から、革命の日が昇るのを目にした」と記している。
◆茶とコーヒーには、カフェインが含まれており、考えを明瞭にしてくれる。ネットワーク、すなわち関係作りを手助けする飲み物でもある。すっきりした気持ちで、政治や文化を論ずる茶会が多くなれば、国民の健康や社会発展にも役立つことになりかねない。6・2統一地方選挙を控え、「いつかは国民の負担に転嫁する」ポピュリズム公約が羽振りを利かせているが、我々も茶やコーヒーを前にし、何が真に国民や国のための公約であるか、より多くの人々が突き詰めてみてほしい。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com