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裁判所に立った「タリバン密入国者」の涙

裁判所に立った「タリバン密入国者」の涙

Posted May. 12, 2010 05:27,   

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11日午前11時半、ソウル中央地裁525号の刑事法廷。細くてすらっとした体に、不精ひげのスタイルなので、ターバンさえ巻いていれば中東の指導者のように見える外国人が緑色の囚人服を着たまま、被告席に座っていた。

「サリム・モハンマド?パキスタンの居住地はどこだったのですか」

刑事1単独の鄭善在(チョン・ソンジェ)部長判事が先に氏名と住所を確認した。自分の名前が呼ばれるや、緊張したせいか反射的に席から立ち上がった。パキスタン人通訳は、「パキスタンのスワット地域でフォークリフトの運転手をしていた」というモハンマド被告(39)の返答を韓国語に通訳した。

パキスタン北西部のスワット地域は、美しい風景に恵まれ、「パキスタンのスイス」と呼ばれるところ。だが、アフガニスタンと国境を接している同地域は、08年からイスラム武装組織タリバンが掌握している。妻と4人の子供を持つ被告は、昨年2月、穀物運搬船に乗って全羅北道群山(チョルラプクト・クンサン)港に密入国した。慶尚南道昌寧郡(キョンサンブクト・チャンニョングン)に移ってきてからは、セメントブロック工場などで不法就労し、先月初めに通報を受けた警察に捕まった。

韓国での被告の行動は怪しかった。出稼ぎ先として韓国にやってきたとは言うものの、送金内容がきちんと裏付けられていない。週末ごとに1時間ほど離れた大邱(テグ)のイスラムセンターを訪れ、礼拝をささげたりもした。ここは、タリバン活動の疑惑が持たれているあるイスラム聖職者が居住したところだった。警察の追及を受けて、被告は「パキスタンで18日間タリバンの訓練を受けたことがある」と打ち明けた。

検察は同日、裁判のなかで「パキスタン政府からタリバンとして名指しされ、指名手配されているのではないか」と聞きただした。しかし被告は、密入国の事実のみを認め、タリバン活動については強く否定した。検察官があらためて、「スワット地域のタリバン掃討作戦から逃れようと韓国入りしたのではないのか」と問いただすと、被告は「タリバンから、家族のうち1人ずつ必ずタリバンに加入しなければ殺すと脅されて、父がやむをえず自分の名前だけを組織リストに載せた」と答えた。そのうえで「私がタリバンならば、帰国してすぐ処罰を受けるに違いないが、それを承知で帰国しようとするはずがないではないか。早く判決が出て祖国に戻れるようにしてほしい」と話した。

最終陳述では、「2歳から9歳までの4人の子供を養うために密入国したのは罪であるので、その罪は素直に償いたいと思う」と言い、とめどなく流れ落ちる涙を袖で拭いた。

傍聴席からは、「タリバンだろうが、本当に気の毒だ」「生半可な『ワニの涙』芝居」という声が聞こえるなど、評価が分かれている。検察は、モハンマド被告に「危険性がある」として懲役2年6ヵ月を求刑した。



bell@donga.com