政治の世界には、「責任」という言葉が全くないのだろうか。李光宰(イ・グァンジェ)・江原道(カンウォンド)知事当選者のケースは、政治家らの無責任さを端的に示している。李当選者は、不法政治資金の収賄罪で1審に続き、控訴審でも当選取り消しに該当する刑を言い渡され、法律に則り、7月1日の就任と同時に、職務が停止される。江原道が船長無しで漂流するようになった過程を見れば、政治家らの自己責任性の不在がそのまま明らかになる。
控訴審・裁判部は、「金を渡した人物と名指された鄭大根(チョン・デグン)元農協中央会長や泰光(テグァン)実業の朴淵次(バク・ヨンチャ)元会長の供述は一貫しており、金を受け取っていないという(李当選者の)主張は受け入れられず、厳しい責任を問うべきだ」と明らかにした。1審の量刑や判決趣旨から見て、控訴審の結果がどのように出るかは十分に予見された。李当選者や民主党がそれを知らなかったはずがない。ならば、李当選者は最初から立候補すべきではなかったし、民主党は公認すべきではなかった。
李当選者への最高裁の最終的判決は、2ヵ月後に出る予定だ。李当選者はその時まで、何ら職務を遂行することができない。最高裁で、当選取り消しが確定されれば、新しい道知事を選ぶ来年4月の補欠選挙までは、また7ヵ月間待たなければならない。9ヵ月間ぐらい、江原道の行政空白が生じ、その被害はそのまま江原道民に回ることになる。江原道民全体が感じる虚脱感や恥ずかしさは大きいだろう。
李当選者は、控訴審に不服する上告と共に、政府が職務停止を告知すれば、それにあわせて、効力停止仮処分申請や行政訴訟、憲法訴願を出すと主張している。民主党は職務停止を規定した地方自治法の改正も推進するという。道知事に当選されたことと、裁判所による判決とは別の問題だ。自分らの利害によって、法律を恣意的に引っ張るという傲慢な姿勢は正しくない。彼らは李当選者が選挙で勝利を獲得すれば、控訴審の裁判でも有利に働くだろうと期待したかも知れない。もし、そのような期待から立候補し、公認したなら、それこそ無責任極まりないことだ。
補欠選挙を実施することになれば、数十億ウォンの選挙費用がかかることになる。06年以降、198の選挙区で行われた7度の再選や補欠選挙に計572億ウォンが費やされた。全て国庫から支払われた。不正や不法など、再選・補欠選挙の責任の拠り所を突き詰め、原因提供者やその所属政党が共同で選挙費用を払うよう定める制度的装置が必要だ。それこそ、政治の自己責任性も高まることになるだろう。最高裁判所には、江原道の行政空白を少しでも減らすためには、李当選者への最終的判決を最大限繰り上げることが求められる。