スペインのワールドカップ(W杯)優勝は、試合内容より、結果を重視する「実利サッカー」が主流だった世界サッカー界に新しいモデルを示した点で意義があった。現地で試合観戦した車範根(チャ・ボムグン)SBS解説委員は、「スペインこそ、世界サッカーの発展モデルだ」と褒め称えた。スペインの優勝は、「トータルサッカー」の元祖でありながら、守備を固めた上でカウンターに出る実利サッカーへと後退したオランダを制した点で、さらに意味がある。
●歴代最高の「トータルサッカー」
ハン・ジュンヒKBS解説委員など専門家らは、「スペインは、歴史上一番トータルサッカーに近いプレーをする」と評価した。
スペインは、最前方から強いプレスをかける。ダビド・ビジャやアンドレス・イニエスタらFW陣は、ボールを逃す瞬間、蜂の群れのように飛び掛ってボールを奪い返す。ボールを奪うと、司令塔のシャビを軸にしたMFとFW陣、DF陣が精巧なパスを回しながら、ボール占有率を高める。
DFらも、積極的に攻撃に加担する。スペインにこのようなサッカーができる原動力は、全員攻撃・全員守備のための強い体力を揃えていながらも、主力選手は世界でも技量が高い選手たちで構成されているからだ。バルセロナやレアル・マドリードなど世界的なクラブの主力がベスト11の主軸だ。
●幻想的なパス美学
スペインのトータルサッカーの中核は、精巧なパス。ますますエスカレートする強いプレスやDF陣の巧妙な反則をものともしない選手らのプレーは、個人技をベースにした簡潔なパス回し。
FW陣とMF、DFラインが共に、水が流れるようにパスが行われるという点で、サッカー専門家らは舌を巻く。パスの魔術師と呼ばれるシャビとイニエスタをはじめ、FWビジャ、DFのカルレス・プジョル、ジェラール・ピケらが、みんな繊細なパスを自然に駆使する。誰がFWでDFなのか、分かり難いほどバランスの取れたプレーだ。
パスはタイミングと速度が肝要。仲間と呼吸が合わないと、途切れてしまう。パスの速度が遅いと遮られる。スペインサッカーは、パスで始まってパスで終わる。現代サッカーの流れは、もうこのような方向へ行くしかないというのが、専門家らの意見だ。
●オランダの外のオランダ
スペインの速いパスと蜂の群れ攻撃の起源は、1970年代のオランダへ遡る。伝説のリヌス・ミケルス監督が創始し、ヨハン・クライフが花を咲かせたトータルサッカー。
クライフは、1988年から1996年までバルセロナを指導しながら、スペインにトータルサッカーを移植した。クライフの一番弟子は、バルセロナの主将だったジョゼップ・グアルディオラ現監督。グアルディオラは、トータルサッカーでリーグ2連覇を果たすなど、バルセロナを最強へと導いた。
スペインのビセンテ・デルボスケ監督は、「個人の能力は、チームワークの中で極大化される」とし、ベスト11人のうち7人をバルセロナ選手で構成した。米紙ウォールストリート・ジャーナルが、「スペインの中に、オランダのトータルサッカーが溶け込んでいる」と分析した理由だ。
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