平壌(ピョンヤン)の大同江(テドンガン)の綾羅島(ヌンラド)にある5・1競技場は、収容人員が蚕室(チャムシル)運動場より3万人多い10万人にのぼる。本部席以外には屋根がなく、夏は陽射しが直に照りつける。太陽が燦々と降り注ぐ午後、綾羅島の橋はアリラン公演に参加する約2万人の学生で埋まり始めた。平壌には、中区域、平川(ピョンチョン)区域など18の区域がある。区域ごとにチームを編成し、最も優秀なチームが本部席向いの中央に座る。
◆アリラン公演は、世界最大規模のマスゲームや芸術公演で、ギネスブックに載っている。しかし、北朝鮮の体制宣伝と外貨稼ぎが目的のアリラン公演は、公演に参加する幼い学生らへの人権蹂躙で悪名高い。脱北者の証言によると、ある学生が公演の練習中に盲腸になったが、応急手当を受けられず死亡したこともあるという。北朝鮮当局は、後に学生に「金日成(キム・イルソン)青年名誉賞」を与えた。
◆マスゲームを繰り返し、筋肉や靭帯が切れたり、骨折するだけでなく、食事が不十分で栄養失調や貧血になる学生も多い。さらに、トイレに行かないように、水もほとんど与えず我慢を強いるため、排尿障害やぼうこう炎になるケースも少なくない。練習中に動作を少しでも間違えば、指導員に容赦なく殴られる。6ヵ月間で1年間の公演準備をするため、授業を休みにまとめて受けたり、卒業を延期することもある。北朝鮮は2日、今年初めてのアリラン公演に、中朝友好を強調するため、「友誼アリラン」という公演を追加した。
◆今年2月に京畿道(キョンギド)教育庁が公表した学生人権条例案には、体罰禁止や頭髪・服装の自由化などが含まれている。学生に思想や集会、結社の自由も保障すべきだという主張もあった。幼い学生に大人と同じ権利を与えることはできない。誤った道に進めば、時には叱り、「愛のムチ」で正さなければならない。今、私たちが関心を向けなければならないのは、親世代に比べ、豊かな環境で勉強する韓国の学生ではなく、人権蹂躙にあう北朝鮮の学生らだ。本当の学生人権条例は、学習権を剥奪され、外貨稼ぎと体制宣伝に動員された北朝鮮の学生に必要だ。
李政勲(イ・ジョンフン)論説委員hoon@donga.com