韓国開発研究院(KDI)は最近、10数年間、上流層や中間層、貧困層の世帯比率の変化を分析した資料をまとめた。可処分所得を基準に、中間層の比率は通貨危機前年の1996年の68.5%から00年61.9%、06年58.5%、09年56.7%へと減少した。13年前より11.8%減少したことになる。一方、上流層は1996年の20.2%から昨年は24.1%へと、貧困層は11.3%から19.2%へと増えた。三星(サムスン)経済研究所も、中間層世帯の比率は、03年の60.4%から昨年は55.5%へと4.9%が減少したと分析した。
経済協力開発機構(OECD)は、全世帯を所得順に並べた場合、中間に当たる「中位所得」の50〜150%の所得を稼ぐ世帯を中間層と規定している。KDIと三星経済研究所が、この概念を活用して分析した結果、中間層は激減し、中間層から上流層へと上がるより貧困層へと下がる世帯数が多いことを示している。
中間層の没落は、米国や日本、欧州のような先進国でも共通に現れている。「1億総中流社会」といわれていた日本は、1990年代「失われた10年」を経て、「格差社会」や「下流社会」という言葉が流行語となった。米国と欧州も、製造業やサービス業の雇用が中国やインドに移され、中間層が減った。1960年代以降、徐々に中間層が増えた韓国は、ほかの国よりさらに早いテンポで中間層が薄くなっている。
中間層は、一国で社会的安定の中心的な役割を果たす階層だ。中間層が厚くなれば社会的統合の可能性も高まる。一方、貧困層へ転落する中間層が増加するほど、階層間の対立や社会不安の危険性も増大し、ポピュリズムの温床となる。中間層を復活させる根本的、かつ長期的な解決策は経済成長だ。従来の輸出主導型成長モデルと共に、内需型成長モデルの並行発展も重要だ。経済や産業構造の変化に適応できる競争力を備えた人材を、一人でも多く作り出す教育改革も急務の課題となっている。
韓国の平均賃金はすでに先進国水準に迫っている。中間層を増やすためには、付加価値の高い新規雇用の創出が欠かせない。製造業よりは国際競争力の低い医療や教育、法律、観光などの高級サービス業の規制緩和や新規参入の壁の撤廃は、質の高い雇用を作り出す近道である。輸出により、十分な資金がある大手企業に、高付加価値のサービス業やグリーン成長への参入を認めることを「特別恩恵」と受け止める見方はもう古い。
鄭雲燦(チョン・ウンチャン)前首相は一昨日の離任式で、「しなければならない仕事をしない政府や、あらゆることができると信じる政府は、共に国や国民に対し害悪を及ぼす」と語った。この政府が必ず「しなければならないこと」は、崩れつつある中間層の復活だ。政府は、政策の焦点を中間層復活にあわせなければならない。