「米国は、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、国家安全保障局(NSA)などの情報機関の調和が取れず、情報を共有できていなかったうえ、航空機へのテロという新しいタイプのテロ方式を想像できていなかった。『まさか米国がやられるだろうか』と皆が油断していた。このようにのんきに構えていた時、01年に9・11テロに遭い、2769人の人命が犠牲となった」。03年に米議会が発表した9・11テロ真相報告書の骨子だ。
世界で昨年にテロが発生した国は、80ヵ月にものぼる。韓国もテロの安全地帯ではない。韓国国民は、年間1000万人以上が海外旅行をする。韓米同盟は、大韓民国の安全保障の軸だが、韓国国民は、米国を敵と認識するイスラム過激分子の攻撃ターゲットにもなっている。また、5000万の国民は、同族でありながら極悪非道な挑発を止めない北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)集団と向かい合っている。天安(チョンアン)艦事件は、金正日集団が起こした悪辣な軍事テロだ。世界20ヵ国の首脳がソウルに集まるG20サミットが11月に近づき、警戒を強化しなければならない時だ。
韓国は、86年のアジア競技大会、88年のソウル五輪、00年のアジア・ヨーロッパ首脳会議(ASEM)、02年サッカーW杯日韓大会の経験を持ち、テロの対応能力は他の国に後れを取らない。しかし、対テロ活動のための法的根拠がないという大きな弱点を抱えている。米国、英国だけでなく日本まで、違憲論議にもかかわらず91年にテロ対策特別措置法を制定した。韓国も国家の安全保障、そして国民の生命と安全を守る確かな手段を確保しなければならない。
対テロ活動で重要なことは、情報収集や通報などの予防活動だ。9・11テロ以降、米国は空港のセキュリティチェックを一層強化した。靴を脱ぎ、ベルトまで取らなければならない。障害者も例外ではない。朴槿恵(パク・グンへ)ハンナラ党元代表が米国を訪問した際、検査台を通過するためにヘアピンをすべて取らなければならなかったほどだ。国民がこのような不便に耐える姿勢になってこそ、テロと戦うことができる。ところで、韓国の国家人権委員会は今年6月、空港の透視スキャナーに対して「人権侵害」という決定を下した。乗客のプライバシーと数百人の生命に対する合理的な較量が必要だ。
対テロ活動に責任ある組織の首長が強い意志を持って緻密に備えなければならない。関連機関の首長が自分の保身や将来の政治的去就を考えてよそ見をせず、今の役目に尽力しているのだろうか。韓国の対テロ能力をテストするG20サミットは2ヵ月後に迫っている。